第113回 一人会社の設立(最終回)

皆さん、こんにちは。Poblacionです。以前ご紹介しましたとおり、フィリピン政府は最近、フィリピン国内における法人の設立及び維持に関する規則をあらためるため、改正会社法を制定しました。改正会社法によって導入された変更点のうち、一つの注目すべき点は、一人会社(OPC)の設立です。本項では、OPCの基本的特徴について論じていきましょう。

OPCは、株主が一人だけの会社と定義されており、その株主になれるのは、自然人、信託又は財団のみであり、法人は、OPCを設立することも、その株主になることもできません。ただし、外国籍を有する人の場合、特定の事業活動に関するフィリピンの国籍規制の遵守を前提として、OPCの設立が認められる場合があります。

OPC設立の手続は、通常の法人の場合と同様です。OPCには定款の提出が義務付けられており、これには、主たる目的、主たる事業所の住所、存続期間、単独株主の名称及び詳細、並びに、資本金額その他を記載します。さらに、単独株主は、自己が死亡した場合及び/又は無能力者になった場合に、代わりに単独株主となる被指名人一名と、その代替となる被指名人一名を指名することにより、定款を改定することなくいつでも、被指名人及びその代替となる被指名人を変更することができます。

通常の法人とは異なり、OPCには付属定款の提出義務はありません。

単独株主は、OPC唯一の取締役兼社長となります。単独株主は、財務役の役割も引き受けることができますが、会社秘書役を務めることはできません。単独株主が、財務役の職務を引き受けると決めた場合には、OPCの授権資本金の額に応じた保証金の払い込みが必要です。他の人が財務役に任命され、任命書の改定版がSECに提出された時点で初めて、保証金の払戻しができます。

単独株主が無能力者となった場合、被指名人がOPCの経営を引継ぐことができます。無能力者という状況が終了した時点で、単独株主は、OPCの経営を取り戻すことができます。一方、単独株主死亡の場合には、被指名人は、死亡した単独株主の法定相続人が決定し、OPCの経営に関して誰が故人の地位を継承すべきかについて相続人間で合意がなされるまでの一時的期間に限り、OPCの経営を引継ぐものとします。

そもそもなぜOPCを設立するのか、という疑問もあるでしょう。OPCの設立は、自己の事業を単独で経営し運営する一方で、個人的な責任のリスクを限定的にしたいと考える個人には、魅力的な選択肢の一つです。通常の法人と同様に、OPCにもその所有者、株主又は役員から独立した別個の人格があります。従いまして、法人格が否認される理由となるような詐欺やその他状況がない限り、OPCは、自己が所有する資産の範囲においてのみ有責となり得るものであり、単独株主がOPCの負債や債務について個人的に責任を負わされることはありません。

SECは、去る2019年5月6日から、OPCの登録申請の受付を開始しています。この進展に伴い、外国籍の者を含むより多くの個人が、フィリピン国内におけるOPCの設立及び事業運営に前向きな気持ちになることが期待されています。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。