第43回 税金逃れはできません – 外国籍の者に適用される所得税規則の基本

皆さん、こんにちは。Poblacionです。先日、区役所から税の申告と住民税納付を求める通知を受け取りました。私は日本語が殆ど読めないため、今回の申告書の作成には本当に苦労しました。納税額の算出方法をインターネットで調べようと思いましたが、見るサイトによって違うことが書かれているようでした。幸いなことに、職場の同僚に納税額の算出と申告を手伝ってもらうことが出来ました。来年こそは、日本の税金について調べて学ばなければ!

外国籍の者がフィリピンで仕事に就いたり事業を立ち上げたりする場合、ほぼ間違いなく、フィリピン国内における所得が課税対象になります。その際にフィリピンでの納税義務に関して私のように途方にくれることがないよう、今回は外国籍の者に対する所得税の基本的規則についてお話しましょう。

I. 所得税区分

自分の所得税額について知る上での第一歩は、まず自分が該当する所得税区分を見極めることです。税法上、外国籍の者は以下の3つの区分に分類されています。

区分

定義

居住外国人(RA 外国籍のフィリピン居住者
フィリピンで取引又は事業を行なっている非居住外国人(NRAETB 外国籍のフィリピン非居住者であり、一暦年中のフィリピン滞在日数が合計で180日を超える者
フィリピンで取引も事業も行なっていない非居住外国人(NRA 外国籍のフィリピン非居住者であり、一暦年中のフィリピン滞在日数が合計で180日以下の者

また、外国籍の者は、その区分にかかわらず、フィリピン国内における所得についてのみ課税されます。

II. 所得税率

A. RA及びNRAETBRAとNRAETBは、細かい点を除いて同様に課税されます。RA又はNRAETBに区分された場合、課税額は所得の性質により異なります。

1.給与所得

もし、フィリピンの使用者との雇用契約に従ってフィリピン国内で所得を得ている「純粋な給与所得者」である場合には、納税義務についてそれほど心配する必要はないでしょう。なぜなら、使用者があなたに代わって納税の手続きを行うからです。税法上、使用者には、あなたの給与に対する見込み税額を源泉徴収し、内国歳入庁(BIR)に毎月納付する義務があります。年度末になると使用者は、年間の所得税を算出し、必要な調整を行ない、年次支払調書を提出します。あなたの勤務先が1つで、その使用者があなたの給与から正しく税額分の源泉徴収をしていたなら、あなたに所得税申告書の提出義務はありません。年次支払調書の提出が、あなたの所得税申告書の「代替提出」とみなされるからです。

所得税の算出方法について知りたいという方のためにご説明しますと、まず、課税対象所得を求めるところから始めます。この計算はやや複雑ですが、大まかな言い方をすれば、課税対象所得は、総所得(給与額)から以下の項目を差引いて算出されます。

・総所得からの除外
税法には、総所得から除外され、所得税の課税対象外となる項目が列記されています。これには、傷害や疾病に対する補償、退職金給付、解職手当、13ヶ月手当等の手当(8万2千ペソを超えない範囲)と、社会保障負担金が含まれます。

・認められる控除
税法上、個人の所得については、1人あたり5万ペソの控除に加え、扶養する子供1人につき2万5千ペソの控除(但し、4人分まで)が認められています。年間の世帯総所得が25万ペソ未満の者には、医療保険料の控除(年間2,400ペソが上限)も認められます。

・別途課税対象となる所得
管理職従業員に対して基本給与に加えて支給される、住宅手当、自動車手当等を含む諸手当は、「諸手当税」の対象となり別途課税されます。また、不労所得(利息、ロイヤルティ、配当金等)にも特別な課税規則が適用されます。

課税対象所得の算出を求められた場合は、以下の式に従って課税額を算出します。

課税対象所得額

課税額

以下

Php10,000.00 5%
Php10,000.00 Php30,000.00 Php500.00 + Php10,000.00を超える金額の10%
Php30,000.00 Php70,000.00 Php2,500.00 + Php30,000.00を超える金額の15%
Php70,000.00 Php140,000.00 Php8,500.00 + Php70,000.00を超える金額の20%
Php140,00.00 Php250,000.00 Php22,500.00 + Php140,000.00を超える金額の25%
Php250,000.00 Php500,000.00 Php50,000.00 + Php250,000.00を超える金額の30%
Php500,000.00 Php125,000.00 + Php500,000.00を超える金額の32%

2.取引所得又は事業所得

もし、フィリピンの使用者に雇用されず、フィリピンで事業運営をするという場合、課税所得の算出方法は若干異なります。純粋な給与所得者の場合と比較して大きく異なる点の1つは、総所得から「事業控除分」を差引くことが認められている点で、以下のいずれかを事業控除とすることができます。

・選択的標準控除(OSD)、すなわち、総売上又は総収入の40%という一定割合の控除
・課税対象年度中に発生した事業経費を項目毎に挙げた控除額

その上で、上記の表式に基づいて課税額を算出することになります。
さらに、純粋な給与所得者の場合と異なり、四半期毎に所得税申告書を提出し、見込税額を納付する義務があります。年度が変わった後の4月15日には、前年度分の所得税額を算出し、未納分を納付し、BIRに年間所得税申告書を提出しなければなりません。

B. NRA – NRAに区分される方に対しては、通常、フィリピンでの所得に対して25%という一定税率の課税が行なわれ、控除はありません。税務上の優遇措置について定めた租税条約の適用対象である場合には、そのまま適用を受けられます。

C. 特定の外国籍の就労者に適用される特別税率税法上、以下の外国籍の就労者には、総所得の15%という特別税率が適用されます。

・多国籍企業のフィリピン国内における地域統括拠点の従業員
・フィリピン国内に設立されたオフショア・バンキング・ユニットの従業員
・フィリピン国内で石油事業に携わる外国のサービス請負業者の従業員

特別税率の適用は、その従業員の使用者が、外国籍の従業員に認められている税務上の優遇措置を、同じ職位に就くフィリピン人従業員にも認めていることが条件となります。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。