第49回 保存すべきか捨てるべきか

皆さん、こんにちは。Poblacionです。私は、家の中をきちんと片付けておきたいタイプです。なので、周りに書類などが雑然としていて埃をかぶっていると、あまり考えもせず捨ててしまうことがよくあります。この習慣のおかげで時折困るのが、本当は必要なのに捨ててしまった、と後になって気づくことです。たとえば、買い物のレシートは1日か2日経つと大抵捨ててしまうのですが、数日後に何か不具合が見つかったり、サイズを間違えて購入していたりして返品が必要になったときが、ちょっと問題です。

フィリピンで事業を行なう企業は、むやみに事業記録を捨ててしまうわけにはいきません。ある種類の文書については、適用されるフィリピンの法律に従い、あるいは健全な事業慣行の一環として、一定期間保存しておく必要があります。

では、事業記録はどのくらい保存しておけばよいのでしょうか?もっとも慎重な安全策を、ということならば、可能な限り長期間保存することになるでしょう。しかし、当然ながら、全ての記録、書類及び文書を永久的に保存するのはかなり費用がかかることですし、現実的とは言えません。そこで、必然的に事業の過程で一部を処分する、ということになるでしょう。
記録保存ポリシーを策定する指針となるよう、以下に記録の保存及び処分に関する基本的ルールをいくつか挙げます。

A. フィリピンの法律及び規則に基づき、保存が義務付けられているもの

事業記録の保存義務が法律に明文化されている場合は、最低でも、その法律又は規則に定められた保存期間が経過するまで、その事業記録を保存しなければなりません。法律により保存が義務付けられている一般的なものを以下に記載します。

保存義務の対象企業

記録

保存期間

課税対象企業 帳簿(補助簿の他、請求書、領収証、受領証、申告書、及び帳簿への記入の裏付となる原文書等の会計記録を含む) 帳簿への最後の記入に基づく課税年度分の申告書の提出期限翌日(申告書が期限までに提出された場合)又は申告書の提出日から10

保存期間の最初の5年はハードコピーで保存する。その後は、内国歳入庁の要件を満たす電子記録システム内に電子コピーのみを保存するという選択肢も課税対象企業にはある。

税金の還付/払戻しを求めた異議申立又は請求が係属中の場合、当該事案が最終的に決着するまで、記録を保存する必要がある。

輸出業者及び通関業者 輸入記録及び/又は会計、事業、コンピュータシステムに関する帳簿、並びにその他通関取引データの全て(支払記録を含む) (輸入業者の場合)輸入申告日から10

(通関業者の場合)輸入日から10

「対象機関」、すなわち資金洗浄防止法により取引の報告が義務付けられている企業(銀行、保険会社及び証券会社を含む) 全取引の記録
顧客の身元、アカウント情報書類及び顧客との取引上の通信に関する記録
取引日から5

顧客のアカウントが閉鎖された日から5

公共通信事業者 音声通話及び非音声通信(SMS、MMS等)に関するデータ記録

ここでいう記録とは具体的に、発信元、送信先、日時、及び通信時間(実際の通信内容を除く)に関する通信データのことである。

固定月額の非従量制サービスに関しては2ヶ月、その他の通信サービスに関しては4ヶ月

未解決のクレームに関連して記録が必要とされる場合は、電気通信委員会が処分を許可するまで記録を保存する必要がある。

B. 健全な事業慣行に従い、保存が必要なもの

事業記録を保存する法律上の義務はなくても、健全な事業慣行に従うためにそのような義務が示唆されている、あるいは必要とされている場合、少なくとも、以下の時点まで文書を保存する必要があるでしょう。

(a) その文書から発生した権利義務が既に無効となった時
(b) その文書に記載されている取引について責任を負わされることがなくなった時

以下に、事業記録の例をいくつか挙げ、それぞれについて推奨する保存期間を記載します。

記録

推奨保存期間

会社の記録全般(会社の登記書類、株主名簿、株式及び譲渡の帳簿、アニュアルレポート、総会議事録、社内の規則及びポリシー等) 会社の記録は、会社が存続している間、保存しなければならない。会社法に基づき会社は、実際の解散から3年間、事業の決済、清算及び資産の分配のために存続する。よって、会社の解散から少なくとも3年後の時点、又は清算及び資産の分配が完了する時点、のいずれか遅い方の時点まで、記録を保存する必要がある。
契約書(供給契約、サービス契約、保険契約等) 民法には、契約書を執行する行為は、当該行為の権利発生から10年で無効になると規定されている。よって、契約は、その期間満了から少なくとも10年、又はその契約に含まれた全ての権利、義務及び利権が有効でなくなる時点、のいずれか遅い方の時点まで、保存する必要がある。
人事記録全般(雇用契約、評価報告書、懲罰記録及び雇用終了記録) 労働法に基づき労務上の訴えを提起できる期間の方が大幅に短い場合(例えば3年)であっても、従業員が、民法に基づき(雇用)契約の違反を理由に使用者に対して通常の民事訴訟を提起することも認められる。よって、人事記録は、慎重を期して、雇用の終了から少なくとも10年、保存する必要がある。
社会保障記録(社会保険関連)(使用者及び従業員の登録、積立保険料、給与額、受給手当記録及び従業員の医療記録を含む) 社会保障関連法上もっとも重い犯罪行為について告訴できる期間は、12年である。よって、社会保障関連法上の義務を使用者が遵守していたことを証明するためには、使用者による保険料の納付又は従業員により福利給付の受給のいずれか該当する方から少なくとも12年、記録を保存する必要がある。
知的財産記録(著作権、商標及び特許登録を含む) 知的財産法上もっとも重い犯罪行為について告訴できる期間は、12年である。よって、知的財産関連記録は、関連する知的財産の存続期間満了から少なくとも12年、保存する必要がある。

ということで、書類を整理する際はよく考えてから、捨てるようにしましょう….


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。