第61回 空旅のパッキングを始める前に

皆さん、こんにちは。Poblacionです。今回は以前、ソーシャルメディアで取り上げられたマニラ空港で起きた恐喝詐欺事件についてお話しましょう。この事件は「ラグラグバラ(「銃弾落とし」の意味)」と呼ばれ、詐欺の手口は、何も知らない旅行者の荷物の中に空港職員がこっそり銃弾を仕込むというものでした。その仕込まれた銃弾は、搭乗前のセキュリティチェックの際に荷物のX線検査が行われるときに「発見」されました。詐欺師は、旅行者の荷物の中に違法物があると指摘し、問題を「決着」させる代わりに数百ペソから数千ペソの支払いを旅行者に強要しました。銃器や銃弾の違法所持はフィリピンでは犯罪ですフライトを逃したくないし、留置所で一晩過ごしたくもない旅行者はかわいそうなことに恐喝に応じる他ありません。

ある車椅子のフィリピン女性が、自分の荷物の中から身に覚えのない銃弾2発が見つかり、空港スタッフに500ペソの支払いを強要されたという話をFacebookに載せたことから、詐欺の噂が一気に広まりました。数日後、あるアメリカ人男性のスーツケースから1発の銃弾が見つかり、その男性は6日間留置されました。男性は、銃弾は自分のものではないと主張し、銃弾を発見したとされる2名の空港警備員に30,000ペソ支払うことを拒絶したために罠にはめられただけである、と訴えました。当然ながら空港当局は、そのような銃弾を仕込む詐欺が空港で行われていることを否定し、そのアメリカ人の逮捕は妥当であったと言明しました。

「ラグラグバラ」詐欺が真実であるか否かは別として、空港で面倒なことを避けるためには、機内への持ち込みが禁止/規制されている項目について知っておいた方がきっとよいでしょう。そこで今回は、フィリピンの空港当局が航空機の搭乗者に機内への持ち込みを禁止/規制している項目について見ていきましょう。

1.拳銃、銃器及び発射装置
エアガン、弾薬シェル、弾丸(ネックレスやペンダントのようなチャーム又はアクセサリーとして使用される弾丸も含む)、信号拳銃、ペレット銃等の拳銃や銃器の他、銃器のレプリカであっても、機内持ち込み手荷物だけでなく受託手荷物にもできません。上述のとおり、フィリピンでは銃器や銃弾の所持は厳しく規制されています(所持には特別許可の取得が必要です)。空港で銃器を所持していると、航空機に搭乗できないばかりか、刑事告訴され重大な懲役刑を科されるおそれもあります。
スリングショット(ゴム銃)やクロスボウのような発射能力のある装置は、機内への持ち込みは禁止されていますが、受託手荷物として預けることは認められています。

2.電撃装置
電撃装置の他、催涙スプレーや殺虫剤も、機内持ち込みはできませんが、受託手荷物にすることはできます。一方、催涙ガスは、機内持ち込み手荷物にも受託手荷物として預けることできません。

3.先の尖った物や刃物
斧、コルクの栓抜き、ナイフ、レターオープナー、爪やすり、ナイフ付爪切り、かみそりの刃、はさみ、剣等は、機内持ち込みはできませんが、受託手荷物として預けることはできます。先の尖った物を受託手荷物として預ける際は、手荷物を取扱う職員が怪我をすることがないよう、必ず刃先をしっかり覆ってください。

4.作業用ツール
ドリル、延長コード、亜鉛めっき鉄線、ハンマー、釘、のこぎり、ねじ回し、テープ(ダクトテープ、ガムテープ、マスキングテープ等)、スパナ等は、機内持ち込みはできませんが、受託手荷物として預けることはできます。

5.鈍器
金属チェーン、ビリヤードのボールやキュー、ボートの櫂、ステッキ、傘、ダンベル、釣り竿、スケート靴、スケートボード、スキューバダイビング用器材、スポーツ用ラケット、大きな三脚等は、機内持ち込みはできませんが、受託手荷物として預けることはできます。
松葉杖や歩行補助杖は、高齢者又は身体障害者が所持し使用する場合には、機内に持ち込めますが、これらを持ち込むためには、事前に空港のセキュリティースタッフの検査を受けておくことが必要です。

6.爆発物、危険物、危険装置 
手榴弾、ダイナマイト、照明弾、花火、マッチ、ライター、ガソリン等は、機内持ち込み手荷物にも、受託手荷物にもできません。爆発装置のレプリカであっても、機内に持ち込むことはできません。

7.液体、噴霧剤、ジェル 
それぞれ100ml以下の容器に詰めて容量1ℓ以下の再封可能な透明のビニール袋に入れた液体、噴霧剤及びジェルは、機内に持ち込むことができます。医薬品(処方箋か市販薬かを問いません)、乳児用ミルク、ベビーフード及び特別な必要栄養食は、100mlを超えていても機内に持ち込むことができます。一方、可燃性、腐食性または有毒性があると分類されている液体、噴霧剤及びジェルについては、分量にかかわらず全ての種類のものが機内持ち込み手荷物にも受託手荷物として預けることもできません。
尚、航空会社によって独自の禁止物品及び規制物品のリストがありますので、航空機への搭載可否については、利用する航空会社にお尋ねください。なお、上記規則はフィリピンから出発するフライトに適用されるものであり、他の国から出発される場合には、異なる規則が適用される可能性もあります。出発地の空港のフライトポリシーを事前にご確認ください。

これらの禁止/規制項目に留意して、快適な空の旅をお過ごし下さい!


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。