第72回 定款を変更する6つのステップ

皆さん、こんにちは。Poblacionです。フィリピン子会社の社名変更、または、会社の目的とする業務の追加や増資をお考えの皆様、その手続は、思われるほど難しいものでありませんのでご安心を!
今回は、フィリピン企業の定款の改定方法についてお話しましょう。

まず重要なことから申し上げると、定款の項目全てが変更可能というわけではありません。理由を挙げるまでもなく、発起人、最初の株主及び取締役に関する詳細や、会社の初代財務役の氏名については変更ができません。一方、社名、会社の設立目的、本店住所、取締役の人数、授権株式数等については、会社が自由に変更できます。

ステップ1:取締役会及び株主総会の開催
定款の改定における最初のステップは、必要とされる会社承認を得ることです。特に改定の場合には、取締役会の過半数による承認と発行済み株式の3分の2以上にあたる株主による承認が必要です。

改定案に株主の同意が得られないとどうなるでしょうか?
会社法により、ある特定の場合、同意しない株主には、「株式買取請求権」、すなわち自分の保有株式を買取るよう会社に要求する権利を行使することが認められています。
株式買取請求権を行使できるのは、提案されている変更が以下に該当する場合です。

・いずれかの株主又は株式のクラスに伴う権利を変更又は制限する効果があるもの
・発行済み株式より優位となる優先性/特権を与えるもの
・会社の存続期間を延長又は短縮するもの

ステップ2: 必要な文書の作成
証券取引委員会(SEC)に提出しなければならない基本書類を以下に挙げます。

・定款改定版
修正箇所に下線を引き、取締役会及び株主による承認日を忘れずに記載してください。

例:「一、当会社は、ABC社と称する。(それぞれ2016年3月3日に開催され取締役会及び株主総会において承認)」

・認証済取締役証明書
取締役の過半数及び会社秘書役が署名した証明書で、以下が記載されているもの。

(a) 変更の対象となる定款の具体的条項
(b) 取締役及び株主の投票
(c) 株主総会の日付及び場所
(d) 納税者番号(全署名者の氏名の下に記載)

・秘書役証明書
会社に関連する未解決の社内紛争に関する証明書。

・承認書
他の政府機関又はSECの部署発行の承認書(該当する場合)。これらの承認書は通常、副次的/特別許可を得ている企業に要求されます。

・SEC遵守監視部門承認書
これは、SECが発行する文書で、会社が必要とされる報告書を全て適時に提出していること、又は適時に提出されなかった報告書がある場合に、これに相当する罰金が納付されていることを証明するものです。

ステップ 3: 追加の要件
追加の裏付書類をSECから求められる場合もあります。例えば、変更が会社の授権株式数の増加にかかわるものである場合、以下の書類の提出がSECから要求されます。

(a) 監査済み財務諸表
(b) 増資証明書(変更案の詳細が記載され、取締役会議長及び会社秘書役が署名したもの)
(c) 財務役の宣誓供述書(増資の引受、支払の受領等を証明するもの)

変更が社名変更にかかわるものである場合、会社はSECに新しい社名を事前に押さえておき、その新しい社名が他の会社の社名と同一又は混同を生じるほど類似していないことを保証する社名検証票を取得しなければなりません。

上記に記載した特別な必要書類について詳細を知りたい場合は、社内の弁護士に相談することをお勧めします。

ステップ 4:事前承認 
SECに書類を提出し、事前承認を受けます。書類が揃っていない場合又は明らかな誤りがある場合、申請人は、SEC職員から必要書類を揃えること、又は誤りを正すことを求められます。

ステップ5:支払 
書類が整うと、申請料の納付が申請人に指示されます。一般的な申請料は500ペソです。ただし、以下の場合は申請料が増額されます。

変更の性質

申請料

会社存続期間の延長 授権資本の1%の5分の1(ただし、2,000ペソを下限額とする)
株式の転換/クラス変更 2,000ペソ
増資 授権資本増資額又は引受価格のいずれか高い方の1%の5分の1(ただし、1,000ペソを下限額とする)
減資 3,000ペソ(資本の返還の場合)又は2,000ペソ(その他の場合)

さらに、SECの法的調査費用として、1%分が上乗せされます。

ステップ 6:実体審査及び証明書の発行 
申請量の支払後、書類はSECに提出され、実体審査が行われます。書類に不備がなければ、SECから定款改定版提出証明書が発行されます。変更手続に要する期間は、変更の性質にもよりますが、通常、約2週間から1ヶ月です。

上記の通り、定款変更はそこまで複雑ではありませんが、会社にとっては重要なことであることにはかわりませんので、定款変更の際は充分にご留意ください。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。