第102回 仕事に年齢なんて関係ない?

皆さん、こんにちは。Poblacion です。「Age is just a number!」つまり、年齢はただの数字だ、という言葉は人々を勇気づけたり、時には励ましたりする言葉としてよく使われます。恋愛や人との関係においては、確かにそうかもしれません。

しかし、雇用主という立場からすると、現実的には、人を雇ったり、特定の給付を与えたりする上で、年齢は大きな要素となるようです。例えば、新たに人を採用する場合、多くの雇用主が比較的年齢の低い応募者を希望します。その方が、一般的には年齢の高い応募者より習得能力が高く、賃金面の要求も低いと考えられているためです。一方、多くの雇用主に、年齢の高い従業員を昇進させる傾向が見られます。年齢の低い従業員よりも「知識が豊富」と考えられているためです。しかし、こうした先入観に基づく差別的慣行により、年齢は高くても仕事の能力面では(優らずとも)劣らない応募者や、年齢は低くても昇進して然るべき従業員の権利が損なわれることがあります。

そこで、共和国法第10911号が制定されました。年齢差別禁止法としても知られるこの法律は、全被雇用者が、報酬、給付、昇進、訓練及びその他の雇用機会において、年齢に関係なく平等に扱われる権利の保護を、その主な目的としています。この目的のため、同法は、雇用主による以下の行為を違法としています:

・年齢に関する希望や制限を記載したり示唆したりする採用募集の印刷又は公表
・応募過程における年齢又は生年月日の開示要求
・個人の年齢を理由とする採用応募の拒絶
・従業員の年齢を理由に、報酬その他の雇用条件及び給付の面で、従業員を差別すること
・従業員の年齢を理由に、昇進又は訓練の機会を拒絶すること
・高齢を理由に、従業員を強制解雇すること
・従業員の年齢を理由に、早期退職を強要すること

当然、例外はあります。法律上、以下の場合には、年齢制限を課しても違法とはなりません。

・年齢が真の職業要件である場合、又は差別化が年齢以外の合理的要因に基づいている場合。たとえば、建築会社は、危険性が高いという業務の性質を考慮し、建築作業員を雇う際に年齢制限を設けることができます。
・法の目的の回避を狙ったのではなく、善意の年功制の遵守を意図している場合。
・善意の退職制度(早期定年退職を求める退職制度等)の遵守を意図している場合。ただし、当該退職制度が、法を遵守して制定されていることが前提です。
・雇用主の行為が法を遵守していると労働長官が証明した場合。

前記例外のいずれかの適用を受けたいと希望する雇用主は、年齢制限を設ける計画に関する報告書を、労働雇用省に提出する必要があります。このような報告書の提出が行われない場合、当該雇用主による年齢制限の設定は認められないという推定がなされることとなります。一方、報告書が提出された場合、(裁判所によって別段の証明がなされない限り)年齢制限には正当な理由があるという推定がなされることとなります。

法に違反した雇用主には、裁判所の裁量により、50,000ペソから500,000ペソ(約112,500円から1,125,000円)の罰金、及び/又は3ヶ月から2年の懲役が科されます。雇用主が法人の場合、罰則は、当該法人における有責役員に科されます。

フィリピンで事業を行っている方は、上記の年齢差別禁止法の要件を確実に遵守し、職場における差別行為がないようご注意ください。そうすることで、法に違反しない公正かつ正当な行為となるばかりでなく、法に基づいて科される重い罰則を回避することにもなります。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。