第7回 台湾には姦通罪があるんです!!

みなさん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

今日は、のっけのタイトルからちょっとびっくりされたかもしれませんが、日本にはない姦通罪(中文では「通姦罪」といいます)を紹介したいと思います。私も、姦通罪があるのを知ってびっくりしてしまいました。セクハラに関する話題を先日、取り上げましたが、特に意識してこういう路線の話を紹介しているわけではございません。たまたまですから。

台湾の刑法第239条によれば、姦通罪は、配偶者のいる人が配偶者以外の人と性的行為に及んだ場合に成立するもので、1年以下の有期懲役に処せられます。実は日本でも1947年に廃止されるまでは刑法に姦通罪の規定がありました。

古めかしい表現ですが、「有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處ス其相姦シタル者亦同シ」と規定されていました。この規定が男女平等でなかったため(既婚の女性が夫以外の人と性的関係を持つと常に姦通罪が成立するが、既婚の男性が未婚の女性と性的関係を持つことは姦通罪ではなかった)、平等な規定にして姦通罪を残すか、姦通罪自体を廃止するかで議論になった末、結局、廃止という結論になったようです。

ちなみに台湾においても、配偶者のいる人と性的行為に及んだ側の者に対しても「相姦罪」が成立し、1年以下の有期懲役に処せられます。

このような姦通罪、相姦罪が規定されているだけで、「実際には処罰されないんじゃないの」と思われるかもしれませんが、しっかり起訴され、処罰もされているんです!!

法務部統計処の資料によれば、2012年だけで男性305人、女性339人が姦通罪、相姦罪で起訴されています。起訴と直接つながるわけではないですが、2012年に姦通罪、相姦罪で有罪が確定した人が、全部で335人いました。

ご注意いただきたいのは、この台湾刑法上の姦通罪、相姦罪は外国人にも同様に適用があるってことです。これは台湾の刑法で明確に定められていますし、このような法律があるのを知らなかったからと、いくら言い訳したとしても、罪に問われるのは同じです。もっとも、実際には6か月以下の懲役を命じられ、懲役日数に応じた罰金を納めることで処理される(このような代替手段も台湾の刑法に規定があります)ことが多いようです。

相手が結婚してないと思って付き合ってたら、実は配偶者がいたってパターンの場合(本人ももちろん配偶者なしですよ!!)、相姦罪の故意がない限り、相姦罪に該当することはありませんので、ご安心ください。

不倫が行われた場合でも日本では刑事犯罪になることはありませんが、台湾では懲役刑に処せられ、最悪のケースでは刑務所送りになる可能性まであるんです。ほんとにしゃれになりませんので、台湾には姦通罪があるってことをよく覚えておいてくださいね〜。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。