第11回 銀行カードを無くしたら・・・

みなさん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

忘年会シーズンということで、私もある忘年会に参加しました。その集まりでは、みなさん毎年、高粱酒を飲むのが恒例なようで、私も数杯、高粱酒をいただきました。高粱酒は多少くせがありますので、なかなか自分から積極的に飲むことはないのですが、みんなでわいわいしながら飲むのは、それはそれで楽しいものですね〜。次の日の二日酔いが怖いとこですけど。その忘年会では、ある酒豪の方は、小さいグラスですが、40数杯高粱酒を飲まれていたようです。すごすぎですよね!!私にはゼッタイ無理です。

本日は、銀行カード(銀行のATMで預金を引き出すカードのことだと思ってください)を紛失し放置していたことで、警察から取り調べを受け、最悪の場合、罪に問われるケースが台湾ではあるという記事を見ましたので、紹介してみたいと思います。

どんなケースなのか、具体例を挙げてみますね。
銀行カードの所有者をAさんとします。「Aさんは銀行カードを無くしてしまったことに気付きましたが、口座に入っている金額がほとんどゼロだったこともあり、銀行に連絡するのも面倒なので、放置していました。すると、運の悪いことにAさんの銀行口座が、詐欺による金銭の受け取りに使われ、Aさんが犯罪者に対して口座を銀行カードとともに売り渡し、引き出しのための暗証番号も伝えたという嫌疑がかけられてしまいました。」

このような例において、Aさんが実際に取り調べを受けて、「銀行カードを紛失し、その状況を放置していただけである」という説明をし、他の状況証拠なども踏まえて、警察に信用してもらえれば特に問題になりません。

しかし、場合によっては、Aさんが「紛失、放置しただけ」と説明しても、他にいくつもの銀行口座を同時に開設していて、その理由を合理的に説明できなかったり、暗証番号についての説明が明確でなく、金に困っていて、説明ができない入金情報がある等の場合には、起訴され有罪にされる可能性があるといえます(このような条件がそろった場合、実際にAさんはかなり疑わしいですよね!!)。

台湾人の元検察官の同僚に確認したところ、台湾でも「疑わしきは罰せず」という大原則があるのは日本と同様です。もっとも、犯罪への関与が合理的に疑われる上記のようなケースにおいて、被疑者は詐欺罪の共犯として起訴され、裁判官の認定によっては有罪判決を受けることになるそうです。

そして、日本で一世を風靡した「オレオレ詐欺」のような詐欺犯罪が台湾でも実際に非常にたくさん起きており、政府としても詐欺行為で重要な役割を担う銀行カードの売買については、厳しく取り締まる方針であるとのことでした。

そういうことで、皆さまが台湾で銀行カードを紛失した場合に、放置するということはまず無いとは思いますが、紛失に気付いたら、すぐに、確実に銀行に届け出るようにしてくださいね〜。落とした銀行カードが「まさか犯罪に使われるなんて」と思っても、後の祭りですから!!取り調べに応じて、結果的に疑いが晴れたとしても、取り調べに応じる時間が無駄ですよ。

日本でも台湾でも、まだまだ悪質な詐欺集団が多く存在しているようですが、なんとか警察に努力してもらって、こういう輩はぜひとも根絶してもらいたいものですね〜。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。