第26回 台湾の姓について(1)夫婦別姓が原則!!

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

先日、台湾に来て初めて食べ物に中ってしまったようで、お腹をひどく壊してしまいました。特に、夜市や屋台でいろいろ食べ歩いたわけではなかったですし、何に中ったかはよくわかりません。このような食中毒は個人的には高校の修学旅行で集団食中毒に遭ったのが最初で、その後も日本、中国で何度か味わっていますが、毎回、辛いものがありますね。まだ、牡蠣に中ったことがないのが不幸中の幸いです。牡蠣に中ると相当ひどいと聞きますので。。。食中毒は、なかなか予防しにくいものですが、皆さまもお気をつけくださいね〜。

今週と来週は、姓、つまり日本でいうところの名字についての法規が、台湾は日本と異なっていて面白いと思いましたので、紹介いたします。

日本では結婚すると、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」という規定が民法にあり、夫婦が同じ姓であるのが当たり前の感覚ですよね。つまり、夫婦別姓は現状、法律で認められていません。そして、現実的には、妻が男性の姓を選び、姓を改める例が圧倒的多数です。夫婦別姓を求める動きも、女性の社会進出が当然になっている現代ではもちろんあるのですが、なかなか法改正というところまで進んでいないというのが日本の現状だと思います。

では、共働き夫婦が多く、女性の社会進出が盛んである台湾において、結婚に際して、姓はどのように扱われるのでしょうか。
実は、台湾では結婚しても夫婦は別姓というのが原則です。台湾の民法において、「夫婦は、各自の姓を維持するが、一方当事者が、配偶者である夫又は妻の姓を冠して、これを戸政機関に書面で登記する場合はこの限りでない。」との規定があり、原則的には夫婦別姓で、例外的に戸政機関(戸籍を管理する役所のことです)において書面で登記した場合に、配偶者である夫又は妻の姓を冠することができるということです。

この「配偶者である夫又は妻の姓を冠する」というのは、例えば、男性である諸葛孔明さんと女性である愛新覚羅雅淳さんが結婚し、妻が夫の姓を冠するという選択をしたとします。そうすると、女性の姓は、諸葛愛新覚羅になるということです。まあ、愛新覚羅という姓の台湾人はいないでしょうが、諸葛愛新覚羅雅淳さんという名前の方がいたらびっくりですよね!!

この「冠姓」という制度ですが、以前の台湾の民法では、婚姻の象徴として原則扱いされていました(例外として、当事者が別段の取り決めをした場合はその取り決めに従うとされていた)が、「冠姓」より従来の性を使う夫婦の方が多かったようで、後に法改正がなされました。

最近の状況についてですが、台湾の夫婦は結婚しても結婚前の姓を維持するケースがやはり多いようです。

このように台湾の夫婦は、結婚に際して、どちらの姓を選択するかという悩みはないといえると思います。では、夫婦別姓であるとすると、子供の姓は、どのような方法で決められるのでしょうか。この点については、なかなかユニークな規定が台湾の法律上、定められていますので、次回のコラムで紹介しますね〜。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。