第78回 株式の譲渡制限

 皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

気付けば、もう台湾は夏を迎えたようで、スーツを着て外を歩くのが辛い季節になってきましたね。蒸し暑い日の湿度たるや尋常なものではない気がします。日本も湿度が比較的高い国だと思いますが、台湾はそれ以上の蒸し暑さで、こればかりはなかなか慣れないですよね~。最近、どなたかから、「台湾の方は暑くてもあまり汗をかかないので、そこで日本人か台湾人か分かるんです」という話を聞いたことがあります。実際、台湾人の方は環境に適応して体質が変わっているということがあってもおかしくはない気がします(笑)。

それから、この時期のお楽しみはマンゴーやパイナップルなどのフルーツですよね。期間限定でオープンするマンゴーかき氷屋さんが台北にあるのですが、私も先日、妻と立ち寄って、今シーズン初のマンゴーかき氷をいただいてきました。氷の冷たさとマンゴーの美味しさが絶品なんですよぉ。そういえばまだ食べてないという方は、ぜひ旬を逃さずご商務いただければと思います。

さて、本日は株式会社(股份有限公司も基本的に同じ意味です)の株式の譲渡制限について取り上げてみたいと思います。
会社法をかじったことのある方なら、株式譲渡自由の原則という言葉を聞かれたことがあるかもしれません。これは、株式会社において、株主は自ら経営手腕を用いて会社に投下した資本についてリスク回避できるとは限らず、払い戻しを伴う退社制度がないことから、株式譲渡による投下資本回収の道を保障することが原則とされているんです。

ただし、株式会社といっても、株主が大量にいる大規模な会社ばかりではありません。同族会社など少数の株主しかいない場合も多くあり、このような株式会社で株式の自由譲渡性を認めてしまうと、好ましくない者が会社の株主となって会社の運営を妨害したり、会社が乗っ取られたりするリスクもあって、会社経営の安定性が害される事態を招きかねません。これは、日本でも台湾でも変わらずいえることであると考えます。台湾でも、少数の株主しかいない股份有限公司というのは無数にありますもんね。

このような、少数の株主しかいない株式会社について、株式譲渡自由の原則を適用させないようにすべく、日本の会社法では、定款で定めることを条件に、すべての株式または一部の種類の株式の譲渡による取得について会社の承認を必要とし、株式の譲渡を制限することを認めています(定款でこのような譲渡制限の定めを設けたときは、その旨、登記も必要とされます)。

これに対して、台湾では会社法上、「会社株式の譲渡は、定款をもって禁止又は制限することはできない。」と規定されており、日本と同様の扱いにはなっていないんですね~。そこで、やむを得ず、株主間の契約(共同出資契約など)において、「株主は他の株主の同意を得ずに無断で株式を第三者に譲渡できない」ということを規定し、好ましくない者が会社の株主となって会社の運営を妨害することを防ぐことを行うケースが多いといえます。実際に当事者間の契約を利用する方法自体は、台湾の最高法院の判断でも有効であると解されています。

ただし、当事者の一方が、契約に違反して株式を第三者に譲渡してしまった場合、当該譲渡の効力はどうなるのでしょうか?この点については、特に法律に規定がないので、解釈事項となりますが、当事者間の契約は第三者に対して効果を及ぼさず、第三者への譲渡は有効と考えられます。その意味で、現在の台湾の会社法には限界があることは確かなようです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。