第79回 給水制限措置の四段階

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

先日、何気なく台湾のローカルTVを見ていると、「甲子園」という文字が出てきました。そのニュースによれば「台湾の青年野球チームが甲子園出場を目指す」というような内容でした。「もしかして、将来的には、夏の甲子園に昔の嘉義農林のように台湾代表が参加するのかっ?」と少し興奮したのですが、後ほど、ネットでニュースを確認すると、台湾の高校年代(アンダー18=U18)の野球大会があり、その優勝チームがU18のワールドカップに参加し、そのワールドカップが甲子園で開かれるということのようでした。

確かに、甲子園を目指すのは間違いないですが、夏の高校野球選手権大会に参加するわけではありませんでしたね(笑)。しかし、将来的に、毎年とは言わないですが、5年に1度の記念大会の時などに台湾や韓国の高校生が日本の夏の甲子園に参加するようになれば、相当盛り上がるでしょうね〜。日本、台湾、韓国などの若者世代の交流がどんどん進めばよいのになぁ。

さて、本日は、今年の台湾、特に桃園辺りから南に工場や住居がある方にとっては深刻な問題であった水不足に関連する法規を取り上げてみたいと思います。

先週からの梅雨のおかげで、ダムの貯水率も改善されたようで、今年はもう断水の心配はないかもしれませんが、つい最近まで今年の水不足は非常に深刻で、石門ダムから水が供給される桃園辺りでは何日間か水が使えない日があったように聞いております。南部の高雄市でも断水措置(5日給水、2日断水)がいつ始まるか、あるいは見送りが続くのか非常に注目されていましたね。

高雄市で採られていた断水措置(5日給水、2日断水)について、給水制限の第三段階とされていました。このような給水制限の内容については、「水道の供給の停止、制限に関する執行要点」(中文では、「自來水停止及限制供水執行要點」)という経済部から発布されている規定が根拠になっています。

同要点の第2条において、水の供給の停止、制限措置については四段階に分けて進められるとされており、まず、第一段階では「オフピーク時について、水の供給圧力を下げる」と規定されています。供給圧力を下げることで、水の使用量を抑制できるのでしょうね。

続いて第二段階として、噴水や道路清掃車などへの水の供給が停止されるとともに、毎月1000立法メートルを超えて水を使用するユーザー(医療関係など特殊な事情がある場合は除く)やプール、洗車場、サウナなどへの水の供給が減らされます。

それから、次の段階が上述しました第三段階で、同要点には、「地区に分け順番に、あるいは全ての地区において時間を決めて水の供給を停止する」とされています。

そして、最後の第四段階ですが、地区の水の利用状況に基づき、量を限定して水を供給するとされ、優先順位が①住民の生活用水②医療用水③国防事業用水④工商事業用水⑤その他の用途の水と決められています。つまり、第四段階まで来ると、半導体や液晶など大量の水を使用する工場などへの水の供給は完全に後回しにされることになっています。

液晶や半導体など水を大量に使う事業者は、第四段階ではなく、第二段階や第三段階の時点で、供給制限が実行されるのに備え、自前で水を確保するような対策を練っていたことでしょう。もちろん、このような事業者は普段からリサイクル等に努めて工業排水をできるだけ少なくしているのでしょうが、水不足が今年以上に進めば、相当、対応に苦慮するのではないでしょうか。

今年の水不足の状況は一息ついたのかもしれませんが、最近は異常気象が「異常」ではなくなりつつありますので、来年以降も台湾において事業を行っていく限り、常に水不足のための備えをしておく必要があるってことですね〜。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。