第90回 台湾の司法試験など

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。

先週末の台風はすごかったですね〜。7日の午後には、風も少しずつ強くなってきて、私も怖かったので早めの時間に帰宅しました。台北でもっとも猛威をふるうとされていた8日は全く外出せず、一日中部屋にこもり、台湾のテレビで台風関連の報道を見ていたのですが、100年を超える樹齢のガジュマルの木が民家に倒れてしまっていたり、バイクが強風で空中を舞う映像など「びっくり!!」なニュースが多かったです。何万戸もの家屋で停電になったというニュースもあり、私の家では蝋燭の準備をしていませんでしたので、「停電しないでくれよ〜」と祈りつつテレビを見ていました。

9日の日曜日になって少し外出したのですが、台北市内の至るところで街路樹が倒れたり、枝が折られたりしているのを見ました。松江路の辺りでは、ビルのガラスが割れたり、街灯が倒れたりしているところもありましたね。台北市内では、水道も浄化能力が追いつかないらしく、水が濁っており、9日の夜、近所のスーパーにはミネラルウォーターは全く残っていませんでした。台風シーズンはもう少し続くので、蝋燭やミネラルウォーターくらいはいざという場合に備えて買っておくようにしようっと。

時々ですが、私はお会いした方から、「台湾の司法試験に合格されたのですか?」という質問をいただくことがあります。答えは、「No」でして、私は日本の司法試験にしか合格していません。このような質問を受けることもあって、そもそも台湾において外国人に司法試験の門戸が開かれているかを確認してみました。

実は、日本でいうところの司法試験は、台湾においては、検察官や裁判官になる者が受ける「司法官考試」と「律師考試」に分かれているんですね〜(偶然ですが、「司法官考試」「律師考試」は先週末に試験が行われました)。そして、律師法によれば、「外国人は、中華民国の法律に基づき、律師試験を受験できる。」こと、そして「律師考試」に合格した者は、法務部の許可を得れば台湾で弁護士として職務を執行できるということが規定されています。

もっとも、同僚に聞く限り、「中国大陸の中国人や香港人などを含め、外国人が弁護士試験に合格して、執務しているということは、ありえる話だけど、聞いたことはない」とのことでした。もし、そのような人がいればニュースで大きく報道されてもおかしくないので、実際に台湾の弁護士試験に合格した外国人はおられないのかもしれませんね。

この点、日本でも外国人は司法試験を受験することができ、実際に、合格している外国人の方もおられます。そして、司法試験合格後に最高裁による修習を終えさえすれば、外国人でも弁護士になれますし、実際に、弁護士になっている方もおられると思います(ただし、裁判官、検察官になることはできません。これは台湾も同様です)。

以上より、私も台湾弁護士になるための試験を受けることはできそうですが、残念ながら合格するほどの力は持ち合わせておりません。ただ、台湾においては、外国法事務律師という制度がありまして、日本法や米国法など、台湾以外の国や地域における弁護士資格保有者で、一定の経験を積んでいる場合には、外国法事務律師となることができるんです(日本にも同様の制度があります)。実際に、私の所属する事務所の代表弁護士は以前から台湾における唯一の日本法弁護士として台北弁護士会に登録しておりました。実は、私も最近、資格要件を満たしたということで外国法事務律師になったんです(手前みそでスミマセンです)。今後も変わらず、よろしくお願いいたします!!


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。