第118回 台湾における時効規定~その1

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。

昨年、中国における一人っ子政策が廃止されました。もともと、一人っ子同士の夫婦では2人目の出産が認められるなど制限が緩和されていたようですが、このように完全に廃止されたのは、減り続ける労働人口をなんとか増やしていかなければならないと政府も考えたからだと思います。ただ、今後、出産が増えていくかというとそんな単純な問題ではなさそうです。ニュースなどを見ていると、「一人っ子しか認められないなら男の子がよい」と考えた夫婦が多かったようで、男女比がいびつになってしまっているとのこと。そのニュースでは国家統計局の2014年のデータを引用し、「20代以下では女性1に対し、男性が1.14~1.19」と男性が余っている実態を紹介していました。こんないびつな状況の上に、女性は結婚対象に一定の経済力を求めるため、女性から男性に対して普通に「車や家はあるの?」という質問がなされるようです(笑)。こういう話を聞くと、中国の若い男性に対し同情の念を禁じ得ません。台湾でも女性は男性に「車や家はあるの?」と聞いているような気がしますので、台湾も状況はそれほど変わらないのかもしれませんけどね~。

日台で異なる時効の期間

本日は、時効規定について取り上げてみたいと思います。

時効といっても、大きく、消滅時効と取得時効に分かれ、前者は一定の時間の経過をもって権利自体の消滅を認める法制度(重要なものとして「債権の消滅時効」が挙げられます)であり、後者は一定の時間の経過をもって対象の物や不動産などの権利者であることを認める法制度であるといってよいと考えます。本日は、前者の消滅時効について紹介し、来週、後者の取得時効について紹介することといたします。

消滅時効という制度自体は、日本、台湾いずれも民法に規定があるのですが、「債権の消滅時効」の完成までに要する期間が日本と台湾では大きく異なります。日本では「債権は10年間行使しないときは消滅する」とされているのに対し、台湾では「法律により短い期間が定められている場合を除き、債権は15年以内に行使しないときは消滅する」とされ、台湾の方が、原則として債権の消滅時効が完成されるまで長い期間を要することが分かります。

ただし、日本、台湾いずれも法律上、上記期間より短期間で時効により債権が消滅するケースを規定しており、常に上記のような期間が必要になるわけではありません。例えば、商品の売買の代価(対価)に係る債権については日本も台湾も同様に2年という非常に短期間での消滅時効の完成を認めています。

時効を中断させるには

では、時効の進行を中断させるにはどうすればよいでしょうか。

時効の進行を中断させるための方法として、日本では「請求」「差し押さえ、仮差し押さえまたは仮処分」「承認」が民法に明記されています。ここでいう「請求」は単なる履行の請求ではなく、典型的には訴訟を起こして支払いを求めることが必要になります。「承認」とは債務者が明示、黙示にかかわらず債務の存在を認める行為をいいます。台湾でも表現こそ違いますがほぼ同様の内容が法定されています。

よって、債務者が明確に債務を認めたり、あるいは一部弁済をしたり支払猶予を求めたりというようなことがない場合、債権者としては裁判で争うなどしなければ消滅時効が進行してしまうんです。台湾でも日本でもこれは変わりないので、消滅時効が完成間際の債権を有する債権者の方はくれぐれも気を付けてくださいね~。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。