求人広告における性別・年齢の記載の適法性

 本年6月10日、高雄市政府は2件の求人広告に対し、就業服務法および性別工作平等法に対する違反を理由に、それぞれ30万台湾元という高額な過料を科しました。

一、1件目の違法広告は、あるレストランが皿洗いスタッフを募集したもので、広告に「皿洗いおばさん募集」と記載していました。高雄市政府は、当該広告の内容が性別および年齢に対する差別を構成しており、就業服務法第5条第1項「国民の就業機会の均等を保障するため、雇用主は求職者または雇用する従業員に対し、人種、門地、言語、思想、宗教、党派、本籍、出生地、性別、性的指向、年齢、婚姻、容貌、容姿、身体障碍、星座、血液型または過去の労働組合員の身分を理由に、差別をしてはならない」に違反すると判断し、同法第65条第1項により、当該レストランに対し30万台湾元の過料を科しました。

二、2件目の違法広告は、ある舞台音響会社が運搬作業員を募集したもので、広告に「重いものを運ばなければならず、男性がよい」と記載していました。高雄市政府は、当該広告の内容が性別に対する差別待遇を構成しており、性別工作平等法第7条「雇用主は求職者または被用者の募集、選考試験、採用、配属、配置、考課または昇進などにつき、性別または性的指向により差別待遇をしてはならない。ただし、業務の性質上、特定の性別のみに適するときは、この限りでない」に違反すると判断し、同法第38条の1により、当該業者に対し30万台湾元の過料を科しました。

 高雄市政府労働者局は「雇用主が求人広告において『女性限定』、『男性がよい』、『女性会計募集』、『容姿端麗』、『年齢50歳以下』などの文言を記載することは、すべて性別または年齢に対する差別に該当し、違法を構成する」と対外的に示しました。

  これについては、雇用主が求人広告において募集したい従業員の条件を詳細に記載しなければ、条件に全く合致しない求職者が大量に応募してくることとなり、求職者の時間だけでなく、雇用主の時間も浪費することになりかねず、多くの台湾の民衆が上記の認定基準は不合理であると考えています。

  もっとも、高雄市政府の見解は現時点で台湾政府の一貫した見解となっているため、求人広告を掲載する場合には、処罰の対象となることがないように、性別や年齢に関する情報は記載しないよう注意することが望ましいのが現状です。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修