公取委が2大チェーン店の結合事案を条件付きで承認

 台湾全土が注目する、大手チェーン店「全聯」が別の大手チェーン店「大潤発」の95.97%の株式を取得しようとした結合申請事案について、公正取引委員会(以下「公取委」といいます)は半年を超える審査を経て、2022年7月中旬に当該申請事案の承認を決議しましたが、同時に当該2社に対し、以下の7つの条件を付けました。

一、約束を確実に履行しなければならず、価格を勝手に引き上げてはならない。但し、サプライヤー自身のコスト構造の変化による値上げなど、結合に参加した事業者の原因によらない場合はこの限りではない。

二、結合実施の翌日から3年間、「全国の各小売価格が同一であることを原則とする」全国的な価格設定方針を維持しなければならず、各地域における競争の状況に合わせて値下げを行うことができる。

三、結合実施の翌日から、個別のサプライヤーに対する付加費用を勝手に引き上げてはならない。但し、サービスの追加により生じた付加費用についてはこの限りではない。

四、結合実施の翌日から3年間、「全聯」はそのサプライヤーから商品の棚代、売り場新設の協賛金を受け取らない。

五、結合実施の翌日から3年間、サプライヤーに対する年度調達販売制度の変更および取引条件について、不利になる修正を行ってはならない。サービスの追加により生じる付加費用がある場合、当該サービスを使用するか否かはサプライヤーが選択および決定するものとし、また、事前にサプライヤーの同意を得なければならない。

六、結合実施の翌日から、売買契約における「最恵待遇約款(サプライヤーとほかのルート間の定価を双方の価格交渉の土台とすること)」および履行方法に関する約定を削除する。

七、結合実施から3年間、毎年12月31日までに以下の資料を公取委の審査に提供する。
(1)スーパーマーケットと量販店の経営形態の相違について、「全国の各小売価格が同一であることを原則とする全国的な価格設定方針」を定め、各地域に権限を付与して特定の商品につき競争を強化させる具体的措置および実施の成果。
(2)小売ルートのサービスの質の向上などに関し、消費者にとって有益な多様な選択肢の具体的措置および実施の成果。
(3)サプライヤーとの間の年度調達販売制度の変更および取引条件の修正に関し、サプライヤーとの協議の過程、およびサプライヤーからの事前の同意取得の具体的措置および実施の成果。
(4)結合に参加した事業者の当年度の財務諸表、営業報告書および売買契約のサンプルなどの資料。
(5)全体的な経済利益に有益であることおよび結合に参加した事業者が自ら約束した事項についての成果報告。

 「全聯」、「大潤発」はそもそも市場シェアが大きく、競合関係にあるチェーン店であるため、当該2社の合併により「サプライヤーの価格交渉能力が一段と弱まる」、「市場に競争が欠け、消費者の利益が損なわれる」などの懸念が生じることは必至であり、そのため公取委は珍しくも、本件の許可処分においてこのように多くの条件を付けました。もっとも、当該条件が確実に実行されるか否かについては、注意を払う必要があると考えます。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修