株式会社の定時株主総会開催日に関する制限について

台湾における株式会社の定時株主総会の開催に関し、台湾の会社法第170条第2項の規定によれば、定時株主総会は毎年少なくとも一度は行わなければならず、且つ毎会計年度終了後6か月以内に開催しなければならないとされている。なお、台湾の商業会計法第6条の規定によれば、法律に特段の規定が置かれている又は営業上特別な必要性がある場合を除き、会計年度は毎年1月1日から12月31日までとされている。したがって、台湾の会社法第170条第2項及び商業会計法第6条の規定によれば、株式会社は毎年6月末日前に、定時株主総会を行わなければならない。

実際に、台湾の多くの上場会社、店頭公開会社、新興会社は、6月に集中して定時株主総会を行っている。通常、6月には1000社を超える株式会社が定時株主総会を行う。6月の特定の日には、1日で300社の上場会社、店頭公開会社が定時株主総会を行う場合もある。

台湾企業では、定時株主総会中に総会屋が来て会議の進行を妨害することを防止するため、時には密かに総会屋に利益を供与したり、又は総会屋の出席を避けるため、故意に会社から遠く離れた辺鄙な場所で定時株主総会を行ったりしているが、このような総会屋対策の一環として、台湾企業は故意に6月の同じ日を選んで定時株主総会を行い、総会屋が同時に異なる会社の定時株主総会の会場に来ることができないようにしているのである。

そのため、企業が適切と考える6月の特定の日には、往々にして1日で数百社が同時に定時株主総会を行うことがある。例えば、2008年6月13日には637社の上場会社、店頭公開会社、新興会社が定時株主総会を開いたとの記録がある。また、2009年6月19日には389社の上場会社、店頭公開会社、新興会社が定時株主総会を行っていたとの記録がある。

会社が定時株主総会を行う日が過度に集中しているため、異なる複数の会社の株主である投資家は、各会社のすべての株主総会に出席して株主権を行使することはできず、またこのことは定時株主総会への出席率を低下させている原因にもなっている。会社の経営陣もこの状況を利用し、株主による監督を逃れている。
それにもかかわらず、台湾の会社法及び証券取引法は、会社が定時株主総会を行う日についての制限を設けておらず、また台湾当局は、過去に強制力を持たない形式で会社が同一日に定時株主総会を行わぬよう勧告しただけである。

このような状況が引き続き発生することを避けるため、台湾の行政院金融監督管理委員会は11月12日に規定を発布し、今後、台湾の上場会社、店頭公開会社、及び新興会社の定時株主総会日については、事前にインターネットで申告しなければならず、且つ1社につき1つの期日しか選択できないものとした。先にインターネットで申告を行った会社は、選択した期日に優先して定時株主総会を行う権利を有する。1日に定時株主総会を開催できる上場会社、店頭公開会社、及び新興会社は、200社までとされている。2011年の定時株主総会の開催日に関しては、各社は2011年3月15日までに登録を済ませなければならず、且つ董事会を開き、董事会決議をもって定時株主総会の期日を確定し、各株主に通知しなければならない。

但し、株主の議決権行使について、電子方式又は書面により通信投票を行う方式を採用している場合は、株主自ら定時株主総会に出席しなくても株主権を行使することができる。このため、行政院金融監督管理委員会の規定によれば、定時株主総会において電子方式を採用している会社、又は書面により通信投票を行う会社については、定時株主総会を行う上場会社、店頭公開会社、新興会社は1日あたり200社を超えることができないという規定の制限は受けない。

台湾の行政院金融監督管理委員会が規定を発布した後は、1日に300社以上の上場会社、店頭公開会社、及び新興会社が定時株主総会を開催するという状況は、発生しないことが予想される。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修