台湾の商標法改正:商標の保護対象の拡大等

台湾の立法院は5月31日に行政院から提出された「商標法」改正案を審議し、最終可決した。今回改正された多くの部分は、制度改革に関連するものであり、主な改正は次のとおりである。

1.商標の保護対象の拡大
今まで商標として登録を行なうことができたのは、文字、図形、記号、色彩、音声、立体形状又はそれらの結合により構成されたものに限定されていたが、今回の改正により、商標保護対象の範囲が「動く商標」、「ホログラム(レーザー光により3次元を記録した写真のことを指す)」等にまで拡大された。従って、将来、携帯電話の電源をつける際に現れるアニメーション動画を商標として登録することが可能になる。

2.商標使用行為の態様の明確化
インターネットを通じてサイトで偽物を販売することが、現行の商標法における「陳列、販売」に該当するかどうかについて、これまで常に争いが生じていたため、今回の改正により商標使用に当たる態様が明確化された。つまり、デジタル映像音声、電子メディア、インターネット又はその他のメディアを通じて商品若しくは役務を所持、陳列、販売、提供、輸出、輸入することが可能な場合であれば、当該手段により、販売の目的をもって商標をつけた商品や役務を所持、陳列、販売、提供、輸出を行うことは、商標使用行為に該当する旨規定された。

3.損害賠償に関する規定の改正
現行の商標法では、損害賠償額の計算方法の一つとして「差し押さえた商標権侵害に関る商品の小売り単価の500倍から1500倍までの金額による」という方法が定められているが、今回の改正により、「1500倍まで」という上限額が維持されたまま、最低損害額の「500倍」が削除された。また、「合理的だと思われる使用料に相当する金額」を損害賠償額とすることができる旨の条文も追加された。

かつてある売り手が、著名なブランドのかばんを数個のみ販売した際に、小売単価(平均単価約51万台湾ドル)の500倍以上の損害賠償責任(約2億5,600万台湾ドル)を負わなければならないという事件があったが、今回の改正により、将来、数億台湾ドルの賠償額を支払うという状況はなくなる可能性がある。なお、法の適用における疑義を避けるために、今回の改正では損害賠償の要件として「侵害者に故意又は過失がある」ことが明記された。

その他、現行法では、登録料の納付方法につき、一括納付と分割納付が定められているが、今回の改正により、分割納付制度が廃止され、登録時に一括して10年分の登録料を納付することとなった。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修