台湾における紙巻たばこの持込みの制限違反

2012年3月上旬、2名の旅行客が香港から台湾に入国した際、それぞれ59カートン、30カートンの紙巻たばこを携帯していたことにより、5カートンを超える部分の紙巻たばこについて没収処分を受けたのみならず、当該2名の旅行客は税関職員により留置されて記録を作成され、さらに司法機関に移送されて刑事調査を受けた。

台湾のたばこ・酒管理法第46条第4項によれば、「たばこ、酒を密輸した場合、2年以下の有期懲役刑、拘留刑若しくは科料に処し、又は新台湾ドル20万元(約60万円)以上200万元(約600万円)以下の罰金を併科する。」と規定されている。

「たばこ、酒を密輸」の認定基準について、たばこ・酒管理法は明確に規定していない。実務上、財政部2001年12月31日台財庫字第0900351445号令によれば、贈り物又は自己使用のために外国製たばこ、外国製酒を輸入する場合には総じて、紙巻たばこは5カートンを超えてはならず、酒は5リットルを超えてはならず、かつ輸入後、事業用に使用してはならないとされている。

また、財政部2006年2月14日台財庫字第09500043390号書簡を参照すると、入国する旅行客が数量制限を超える、未申告のたばこ・酒を携帯した場合、営利目的でたばこ・酒を携帯して入国したと判断されたときは、税関職員はたばこ・酒管理法第46条第4項の規定に基づき、当該旅行客を司法機関に移送して調査し、その刑事責任を追及することができる。

以上からすれば、実務上は「5カートンのたばこ」が基準となっており、旅行客がこの数量を超える紙巻たばこを携帯して入国したことが税関により摘発されれば、超過部分について没収される可能性があり、さらに司法機関に移送されてたばこ・酒管理法に基づき刑事罰を受ける可能性がある。

しかしながら、この基準は非常に厳しいため、世論の批判を受けている。
2011年を例とすれば、台湾税関は5カートンを超える紙巻たばこの携帯入国事件を1000件近く摘発しており、しかも大部分は数量が20カートンを超えていないケースであるため、一件ごとすべて司法機関に移送して刑事責任を追及するとなれば、厳しすぎるだけでなく、大量の司法資源を同時に浪費することになる。

したがって、現在、台湾財政部は取り締まりの基準を緩和する検討・議論を行っており、一方、税関側からは、基準を20カートンまで引き上げ、20カートン以上の紙巻たばこを携帯して入国し、かつ合法事業の関連証明資料がない場合には司法機関に移送することとし、20カートンに満たない場合には、移送はせず、5カートンを超える部分について没収することとする提案がなされている。
但し、改正規定が正式に公布されるまで、台湾税関は現行の基準に基づき引き続き取り締まりを行っている。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修