就業サービス法において規制される外国人労働者による「労働」

就業サービス法第43条によれば、雇用主が関連政府機関から許可を得なければ、外国人は中華民国領内において、労働することはできないとされている。これに関し、台南地方裁判所の行政法廷が2013年4月24日に下した2013年度簡字第6号行政訴訟簡易判決によれば、就業サービス法における「労働」とは労務を提供する行為又は労働の事実を有する行為を指し、これは時間の長さとは関係がない。外国人に労務を提供させる場合、一時的、臨時的な労務であっても、「労働」に該当するため、雇用主は、事前に関連政府機関から許可を得る必要がある。

本件の概要は以下の通りである。
甲は、外国籍の看護婦Aに病院で甲の母親の看護をさせることについて、適法な許可を関連政府機関から取得していた。しかしながら、事情により、適法な許可を関連政府機関から取得していない外国人Bに、一時的にAの代わりに甲の母親に対する看護サービスを提供させた。警察の告発を受けて台南市政府は、就業サービス法第43条、第44条(何人も違法に外国人を労働に従事させてはならない)、第63条第1項(第44条の規定に違反した場合、15万新台湾ドル以上75万新台湾ドル以下の罰金を科す)等の規定に基づき、甲に対し15万新台湾ドルの罰金を科した。

甲は台南市政府の処罰を不服としたため、裁判所に対し当該処分の取り消しを求める行政訴訟を提起し、「就業サービス法の立法趣旨は、台湾国民の労働権を保障することであり、外国人による台湾における行為が本国人の就業の機会を排除するものでなければ、就業サービス法に規定される『労働』の範囲外である。甲はAが甲の母親を看護することについて、適法な許可を得ている。Aが一時的に勤務できなくなったため、甲の母親の看護をAに代わって臨時的にBに依頼することは、本国人の労働の機会を排除するものではなく、就業サービス法に規定される『労働』でもないため、違法行為は構成しない。」と主張した。

これに対し、裁判所は審理の上、「就業サービス法における『労働』とは労務を提供する行為又は労働の事実を有する行為を指し、時間の長さとは関係がない。甲がBに甲の母親の看護を依頼しているという事実がある以上、これは労務に従事する行為に該当し、当然、就業サービス法における『労働』の範囲内にあると言える。しかも、甲はAに母親の看護をさせることについて事前に適法な許可を得ている以上、外国人であるBに労務を提供させる場合にも事前に許可を得なければならないことを知っていたはずである。よって、甲の敗訴の判決を下す」という判断を下した。

本判決に基づき特に注意すべき点は、外国人が臨時的な労務の提供に従事する場合にも、雇用主が事前に関連政府機関の許可を得なければならないことである。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修