反トラスト基金の創設

立法院は6月9日の第三読会において、公平取引法の改正案を可決し、公平取引委員会(以下「公平会」という)は「反トラスト基金」を創設し、これをカルテル告発の報奨金とすることができる旨を追加した。
草案を立案した立法委員は、本改正案の趣旨について、以下のように説明している。

「企業間のカルテルは高い秘密性を有するため、政府が具体的な証拠を発見することが非常  に難しい。そのため、高額の報奨金を提供し、内部の従業員が『内部告発者』の役割を担い、違法なカルテルに対して告発を行うことを奨励する必要がある。」

いわゆる「カルテル」とは、公平取引法第14条によれば、「競争関係を有する同一の生産・販売段階の事業が契約、協定またはその他の方法による合意により、商品もしくはサービスの価格、数量、技術、製品、設備、取引対象、取引エリアを共同で決定する行為または事業活動について相互に制限するその他の行為をいい、なおかつ、それが生産、商品取引またはサービスの需給の市場に影響を及ぼすのに十分である場合」を指す。

例えば、複数のガス供給業者が協定により同時にガス価格を10%値上げすることは、典型的なカルテルの一種である。

公平取引法第15条によれば、カルテルは原則として禁止されており、メーカーによる技術向上、品質改良のためなどの限定された場合においてのみ、例外的に許可される。

実務においては、ここ数年いくつかのカルテルの著名な事例がある。

  1. 2011年10月、公平会は3社の食品メーカーにおいて、牛乳の価格がほぼ同時に値上げされているのを発見したため、当該3社のメーカーはカルテルを構成していると認定し、3,000万台湾元の課徴金を課した。
  2. 2011年10月、公平会は4社のコンビニエンスストアにおいて、コーヒーの価格がほぼ同時に値上げされていたため、カルテルを構成していると判断し、当該4社のコンビニエンスストアに2,000万台湾元の課徴金を課した。
  3. 2013年3月、公平会は9社の民営発電所が電気価格の調整を共同で拒絶したため、カルテルを構成していると判断し、当該9社の発電所に63.2億台湾元の課徴金を課した。

しかし、上記の三例において、事業者は公平会の処分にいずれも不服を示し、行政訴訟を提起した。最終的に1つ目の事例の処分のみが裁判所に支持され、他の二例はいずれも証拠不足などの原因により、公平会の敗訴の判決が下され、事業者は処罰を免れた。

なお、メディアの報道によれば、カルテルの告発の報奨金は、少なくとも10万台湾元以上とのことである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修