台湾で交通事故に遭った時の対応

交通事故に遭うことは不幸な出来事であるが、言語、法律などに熟知していない外国で交通事故に遭った場合、それは被害者にとって更に不幸な出来事となる。また、日本人から「台湾では、交通事故の加害者の責任をどのように追及するのか?損害賠償の請求はどうするのか?」という質問をよく受ける。そこで、台湾でタクシー、バスなどに乗っている際に交通事故に遭い負傷した場合に、どのように対応するかについて説明する。

現場を保全し、写真を撮影する

交通事故の発生後、意識が明確な場合には、直ちに自ら又は現場にいる友人に頼んで携帯電話で現場の状況(複数の車両の位置および負傷状況などを含む)を撮影し、また証拠保全のため、警察が現場に到着するまで、事故車両および被害車両のいずれの位置を移動させないよう要求する。

直ちに警察に通報する

携帯電話又は市内電話のどちらからであっても、警察への通報電話番号は「110」である。交通事故地点が山の中、海辺などの僻地でなければ、通常は通報後、10分~20分程度で警察が現場に到着し、加害者、被害者に話しを聞いて調書を作成し、かつ現場の写真を撮影し、交通事故現場図および交通事故発生責任の初歩的判定報告書を作成する。

病院に診断証明書を発行してもらう

交通事故の発生後、病院で治療を受けた時は、加害者の法律上の責任を追及する証拠資料とするため、医師に負傷に関する診断証明書を発行してもらう。

警察に交通事故の関連資料の取得を申請する

交通事故発生の原因および責任の帰属を確認するため、交通事故の発生から一週間後、被害者は自ら又は他人に委任して交通事故の担当警察官に前述の二の現場写真、交通事故現場図および交通事故発生責任の初歩的判定報告書の取得を申請することができる。

交通事故発生後6ヶ月以内に、加害者に対し過失傷害罪の刑事告訴を提起する

台湾法上、過失傷害罪は親告罪にあたるため、交通事故発生後6ヶ月以内に告訴を提起しなかった場合、その後は告訴することができないことに特に注意が必要である。

なお、刑事告訴を提起すると、加害者・被害者間の交渉が円滑に進むケースもある。

以上が台湾で交通事故に遭った時の対処のポイントである。繰り返しになるが、過失傷害罪は親告罪にあたるため、交通事故発生後6ヶ月以内に告訴を提起しなかった場合、その後は告訴することができないことに特に注意が必要である。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修