携帯電話の通信APPの約款に関する規制

Line、Wechatなどの携帯電話インスタントメッセージソフトウェアの普及に伴い、アカウントの不正使用、消費者が購入したスタンプの原因不明の消失などの紛争が後を絶たない。そこで、携帯電話の通信APPにより引き起こされる問題を解決するために、経済部は2017年9月下旬、「インスタントメッセージソフトウェアサービス約款に記載しなければならない事項および記載してはならない事項(以下『本事項』という)」を公布した。

本事項の規制対象は「消費者情報の開示」、「アカウント使用の管理」、「システムセキュリティの維持」、「契約条項の公平性」および「個人情報の保護」など、主に五つの分野に及んでいる。
なお、本事項は2018年5月1日より実施される。

本事項における重要な規定は、具体的には次の通りである。

  1. 定義:「本事項にいう『インスタントメッセージソフトウェアサービス』とは、事業者の主たるサービス内容が、消費者がコンピューター、スマートデバイス又はその他の電子化媒体を使用し、インターネットによる音声、画像、文字、データ、ファイル又はその他の情報の伝送を通じて、特定可能な一対一又は一対複数による情報の即時伝達、対話の閉鎖型の通信サービスを行うことであることを指す。電子メール、チャット、電子掲示板又はその他のネットワークプラットフォーム等が提供する附属通信サービス機能は含まれない。」
  2. 記載すべき事項の四(セキュリティ維持の責任)
    「事業者は消費者のアカウントの管理およびシステムセキュリティの維持について、以下の情報を明記しなければならない。

    • (一)消費者が他人によるアカウントの不正使用に遭った際の通知方法。
      事業者は消費者のアカウントが不正使用されたのを確認した後、直ちに当該アカウントの使用を停止しなければならない。法令の規定又は正当な事由がある場合を除き、パスワードの変更を申請するよう消費者に通知した後、当該アカウントの使用を回復させなければならない。
    • (二)消費者の端末装置において、変更又は不法侵入によってそのアカウントが削除された場合、事業者に関連情報を提出して、アカウントの回復、代金前払い又は代金支払により購入した付加価値サービス商品の回復に協力するよう申請することができる。
    • (三)事業者はそのシステムが当時の科学技術又は専門的な水準において合理的に期待することのできるセキュリティ性に適合しているよう維持しなければならず、消費者による本サービスの使用に関する記録又は個人情報が不法に侵入、取得、改竄、毀損されることを防止しなければならない。システムが不法侵入に遭い又は破壊された場合、合理的な措置を講じた後、出来る限り速やかに回復させ、消費者が被った損害について賠償責任を負わなければならない。」
  3. 記載してはならない事項の五(事業者による無断での契約解除又は終了による賠償責任の免除)
    「事業者が無断で契約を解除又は終了することができると約定してはならない。事業者が契約の解除又は終了によって負わなければならない賠償責任を事前に免除してはならない。」

関連事業者は、2018年5月1日からの実施に備え、準備が必要となる。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修