第259回 就業サービス法改正 月給4万元未満は「応相談」禁止

立法院は2018年11月9日、就業服務法(就業サービス法)改正案を可決しました。改正法の要点は以下の通りです。

1.改正法第5条第2項で、使用者が募集する職務の月給が4万台湾元(約14万6,000円)に達しない場合、求職者に賃金の範囲を具体的に知らせなければならないと規定されました。これは、使用者が従来、求人広告の賃金欄に記載していた「応相談」は、今後、月給が4万元に達しない職務に使用してはならないことを意味します。使用者がこれに違反した場合、同法第67条の規定に基づき、6万元以上、30万元以下の過料に処されます。

2.旧法では、使用者は求職者または雇用する従業員に対し、種族、階級、言語、思想、宗教、党派、本籍、出生地、性別、性的指向、年齢、婚姻などを理由に差別してはならないと規定されていました。改正法第5条第1項ではこれに加え、使用者は容貌、五官、心身障害、星座、血液型または過去の労働組合会員の身分を理由に差別してはならないと規定されました。使用者がこれに違反した場合、同法第65条の規定に基づき、30万元以上、150万元以下の過料に処されます。

外国語以外も教育可能に

3.専門業務従事者である外国人の台湾での就職制限を緩和するため、改正法第46条では、外国人が台湾で就業する場合、短期補習班(予備校)で仕事をする際に「外国語」以外は教えてはならないという規定が廃止されました。これにより、今後は外国人専門人材が補習教育業務に従事する場合、外国語以外の教育業務に従事できるようになりました。

4.また、外国籍の労働者の人権を保障するため、改正法第40条の規定および第67条おいて、人材紹介業者が外国籍の労働者が使用者などからセクハラ、人身売買、自由妨害、重傷害または殺人行為を受けた疑いがあることを知りながら、24時間以内に主管機関などに通報しなかった場合、6万元から30万元の過料に処されると規定されました。

実務上、多くの会社は人材募集の際、求人広告の賃金欄によく「応相談」と記載していますが、今後は月給が4万元に達しない業務について「応相談」としてしまうと違法となるため、特に注意していただきたいです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。