第273回 裁判所での調停

法的な紛争を解決する手段として、裁判や仲裁の他、調停という制度があります。調停と仲裁は、いずれも第三者が紛争当事者の間に入りますが、調停が和解のあっせんであるのに対し、仲裁は第三者により仲裁判断が下される点で異なります。つまり、調停は、勝敗を決めるものではなく、お互いが話し合いにより合意する形で紛争の解決を図るものです。そして、調停には、裁判所での調停、郷鎮市での調停、仲裁機関での調停など、いくつかの種類がありますが、今回は裁判所での調停について紹介させていただきます。

調停前置と任意調停

民事訴訟法第403条第1項各号には、訴訟の提起前に原則として調停を経なければならない紛争の類型が列挙されており、例えば、雇用者と被用者の労働契約に関する紛争、賃貸料の増減に関する紛争、不動産所有者間の境界に関する紛争、地上権の期間、範囲の定めに関する紛争、50万台湾元(約180万円)以下の財産権に関する紛争などがこれに当たります。

もっとも、同項各号に該当しない場合でも、紛争当事者は、訴訟の提起前に調停を申し立てることができます(同法第404条)。さらに、第一審係属中であっても、当事者双方が合意すれば、訴訟手続きを停止し、事件を調停に付すことが可能です(同法第420条の1第1項)。

成立すれば確定判決と同一効力

民事訴訟法第416条第1項において、調停が成立した場合、訴訟上の和解と同一の効力を有するとされています。そして、同法第380条第1項により、訴訟上の和解は確定判決と同一の効力を有するため、調停が成立した場合には確定判決と同一の効力があり、相手方が義務を履行しない場合には、強制執行の申し立てをすることも可能です。

調停が不成立の場合

当事者双方が調停期日に出席し、調停が不成立となった場合、裁判所は、一方の申し立てにより、当該事件に適用すべき訴訟手続きに基づき、訴訟の弁論をするよう命じることができます(同法第419条第1項本文)。この場合、調停の申し立て時点で訴訟の提起があったものと見なされます(同条第2項)。

また、調停が不成立で、調停申立人が調停不成立証明書の送達後10日以内(送達前を含む)に訴訟を提起した場合も、調停の申し立て時点で訴訟の提起があったものと見なされます(同条第3項)。さらに、第一審係属中に、訴訟手続きを停止して事件を調停に付していた場合、調停が不成立になると、訴訟手続きが継続して進行します(同法第420条の1第2項後段)。

なお、調停の過程で調停委員または裁判官が行った忠告および当事者が行った陳述または譲歩は、調停不成立後の本案訴訟の裁判の基礎とする(判断の根拠とする)ことはできません(同法第422条)。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。