第447回 公正取引法違反による処罰の取消判決

本コラム第434回の「不正競争行為の処分に関する包括条項」(https://www.ys-consulting.com.tw/news/103680.html)でご紹介した通り、公平交易法(公正取引法)第25条には、「本法に別段の定めがある場合を除き、事業者は他の取引秩序に影響を及ぼすに足りる欺罔(ぎもう)または著しく公正を欠く行為もしてはならない」旨が規定されています。法律の規定として、あらゆる不公正な行為を列挙することは不可能ですので、同条は包括的に不公正な行為を規制しています。

もっとも、同条の規定は抽象的であり、どのような行為がこれに該当するかは判断が難しいです。そこで、公平交易委員会(公平会、公正取引委員会に相当)は、同条適用の具体化・明確化のため、「公平会が同法第25条の案件について処理する際の原則」を公表しています。同原則では、「取引秩序に影響を及ぼすに足りる」、「欺罔」、「著しく公正を欠く」等に該当するか否かを検討する際の考慮要素が列挙されているため、一定程度参考になります。

また、公平会による過去の処分事例等も参考になります。2022年6月2日に、台北高等行政法院(行政裁判所)が公平会の処罰の取消判決(台北高等行政法院110年度訴字第1498号判決)を下したので、以下では当該事例をご紹介いたします。

浄水器販売業者の抽選

浄水器販売業者であるA社は、飲食店と協力し、アンケートに答えた人の中から抽選で景品を贈る活動を行いました。当該活動で、A社が、抽選で贈られる景品について「市場価格2万8800台湾元(約13万5000円)、限定30名」と記載していたにもかかわらず、当選者に電話で知らせる際に、体験価格2880元で当該景品を取得できると案内した行為について、公平会は、同法第25条に違反するとして、A社に10万元の過料を科しました。

しかし、A社が当該処分の取り消しを求めた行政訴訟では、裁判所は、▽A社が活動の宣伝ポスターにおいて、当選者には10%の体験価格で購入できる旨が、分かりやすい場所に、他の文字と比較して大きな字で記載し、注意を促していたこと、▽当選者には10%の対価を支払って購入するかどうかについて検討する十分な余裕があったため、当選と金銭の支払いには必然的関係はないこと──等を理由に、A社には「欺罔または著しく公正を欠く行為」はなかったと判断し、公平会による処分を取り消しました。

上述の通り、公平交易法第25条の規定はとても抽象的ですので、台湾での商行為が同条に違反する懸念がある場合には、事前に法律の専門家に相談する等して対策を検討することをお勧めいたします。

また、同条違反を理由に公平会から処罰を受けたとしても、上記事例のように行政訴訟等で争う余地はあるため、処罰の通知を受けた際にも、法律の専門家に相談する等して対応を検討することをお勧めいたします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。