第456回 会社に対する信用妨害罪

先日、台中において、人気焼肉店である「屋馬焼肉」の名をかたりインターネット上で違法な薬物などを販売していた男らが逮捕されました。男らは、「イクラ2人前豪華セット」、「ツバメの巣」などの隠語でケタミンなどの薬物を販売していました。男らは、薬物危害抑制条例(中国語:「毒品危害防制條例」)により刑事責任を追及されるほか、焼肉店の屋馬より、民事で損害賠償請求を請求され、さらに、刑法第313条の信用妨害罪で刑事告訴される可能性もあります。

信用妨害罪とは

刑法第313条第1項では、流言を散布し、または詐術により他人の信用を害した場合、2年以下の有期懲役もしくは拘留に処し、または20万台湾元(約86万円)以下の罰金を科し、もしくはこれを併科する旨が規定されています。

さらに、同条第2項では、ラジオ・テレビ、電子通信、インターネット、またはその他の伝播道具を用いて前項の罪を犯した場合、その刑を2分の1まで加重することができる旨が規定されています。

日本の刑法第233条においても、信用棄損罪という罪が規定されていますが、台湾のようにインターネットなどを用いた場合に刑の加重が可能であるとはされておらず、法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金とされています。

法人も対象

台湾刑法上の信用妨害罪について、裁判例(台湾橋頭地方法院107年度簡字第2477号刑事判決)によると、同罪の「他人」には、自然人だけではなく法人も含まれると解されます。また、同罪の保護対象は他人の支払能力または支払意思に対する評価だけではなく、契約履行に関する表現を含み、例えば、販売製品の品質、アフターサービスの良しあしなど、一切の経済上の義務の履行に対する評価が含まれると解されます。

なお、同罪は刑法第314条により親告罪とされているため、被害者が刑事告訴をしなければ、加害者が起訴されることはありません。被害を受けたと考える場合、専門家に相談し、刑事告訴について検討することをお勧めいたします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。