第473回 転売を目的とするチケット類販売は処罰されるか

通常、日本の大きな駅付近では、金券ショップを見かけますが、このような光景は台湾にはありません。その原因の一つとして、台湾では交通機関利用券を購入した後、利益を得る目的で転売する行為は禁止されているということが挙げられます。

台湾で利益を得ることを目的とする転売が禁止されているチケット類の種類は主に下記二つあります。

交通機関利用券について

社会秩序維持法第64条第2号は、交通機関利用券、レジャーチケットを、自己用ではなく、購入して利益を得る目的で転売した場合、3日以下の拘留または1万8000台湾元(約8万2000円)以下の過料に処すると規定しています。

また、台湾高速鉄路(高鉄)、台湾鉄路(台鉄)の乗車券を購入した後、価格を上乗せして販売し、または交換によって利益を得た場合、鉄道法第65条により、乗車券の枚数に基づき、1枚当たり乗車券の価格の5~30倍の過料に処するというさらに重い処罰を受ける可能性があります。

興行入場券について

台湾での興行入場券の販売方式は、日本と違い、抽選制はまれで、主に先着順方式となっています。このため、業者が計画的にチケットを買い占めると、一般の観客が購入できるチケットがなくなり、しかたなく業者から不正転売を目的とするチケットを購入するということが起こりやすくなります。最近では、不正転売を目的とするコンサートチケットをめぐる紛争も数多く発生しています。

この問題を解決するため、2023年5月12日に立法院が「興行入場券を券面額または定価を上回る額で販売した場合、チケットの枚数に基づき、1枚当たり券面額の10~50倍の過料に処する」、および「虚偽の資料またはその他の不正な方式により、コンピュータまたはその他の関連設備を利用して興行入場券を購入し、チケットの予約証票または引換証票を取得した場合、3年以下の有期懲役に処し、または300万元以下の罰金を科しもしくは併科する」という、不正転売を目的とする興行入場券を販売した場合の処罰を重くした規定を「文化創意産業発展法」の第10条の1(以下「同条」といいます)として追加することを決議しました。

以上より、チケット類の転売に関する法規範は日本と台湾で完全に同じというわけではありません。台湾でチケット類を売買する場合は特に留意する必要があります。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。