第6回 2013年からの 証券取引所得税の課税

立法院で7月25日、所得税法と所得税基本税額条例の改正案がそれぞれ最終可決され、2013年から株式の売却に対し証券取引所得税が課税されることになった。現行法の規定では、売主は株式の売却時に売却価格の0.3%の証券取引税を納付するだけだったが、今後は証券取引税のほか、証券取引所得税も納付する必要がある。

改正法の規定によれば、個人に対する証券取引所得税の課税においては、13年と14年は「見なし所得課税」と「実額課税」の2つの方式が併用される。

「見なし所得課税」方式による場合、台湾証券取引所の株価指数(加権指数)が8,499ポイント以下の場合は証券取引所得税が免除される。そして、8,500ポイントから9,499.99ポイントでは証券取引税の税率は売却額の0.02%で、以下、▽9,500〜1万499ポイント、0.04%▽1万500ポイント以上、0.06%──と変動する。なお、「見なし所得課税」方式は2年間のみの実施で、15年以降は「実額課税」に一本化される。

「実額課税」方式では、株式取引の実際の「所得」に応じて証券取引所得税が課税される。税率は15%で、「所得」は(売却収入)−(原始取得コスト)−(必要費)の計算式によって算出される。

13・14年は方式の選択が可能

13年と14年においては、「見なし所得課税」方式と「実額課税」方式のいずれか一方を選択でき、「見なし所得課税」方式に基づいて納税した場合、実額については納付する必要はない。ただし、1)当該年度における10万株以上の店頭公開株式の売却 2)13年以降の1万株以上の新規株式公開(IPO)株式の売却 3)未上場・未店頭公開の株式の売却 4)中華民国内に居住していない者の売買──の4つのケースでは、「実額課税」方式によると規定されている。

15年以降の「実額課税」方式の対象には、上記1)~4)に加え、当該年度における株式売却総額が10億台湾元以上に達した場合も追加される。

ちなみに、今回の改正によれば、13年以降、法人に対しては12~15%の税率で証券取引所得税が課税されるとされている。

今回の改正のうち、個人に対する証券取引所得税に関する改正については、台湾のメディア、世論の大きな反発を呼んだ。その理由は、証券取引所得税の課税による取引コスト上昇、および証券取引所得税の税制が複雑で理解が困難なためだ。外国人投資家もこうした複雑な税制の実施について懸念を示した。

なお財政部は10月9日、来年の課税方式について、居住者は11月16日から12月15日までの間に見なし所得課税方式か実額課税方式かを選択しなければならず、自主的に選択しない場合には、見なし所得課税方式を選択したものと見なすと表明した。

来年1月1日以降に証券取引口座を開設する場合には、開設時に課税方式を選択する。いったん選択した課税方式は年度途中には変更できず、保有するすべての証券取引口座に一律適用される。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。