第18回 「第三者支払いサービス」開放で、台湾電子商取引の商機が大幅拡大

行政院金融監督管理委員会(金管会)は3月、「第三者支払いサービス」を正式に開放した。これにより、インターネット上における取引および決済がさらに安全となるため、台湾の電子商取引の商機も大幅に拡大する見込みである。

ネットオークションなどに安心感

「第三者支払いサービス」とは、独立した第三者機関が、銀行と契約締結などの形により、「第三者支払いプラットフォーム(Third−party payment platform)」を構築し、ネット上の売り手と買い手との間での取引のため、商品代金の代理受け取りおよび代理支払いのサービスを提供することを指す。具体的に説明すると、買い手がネットオークションサイトなどで商品を購入する際に、まず、買い手は銀行振り込みまたはクレジットカード払いなどで、商品代金を第三者支払いプラットフォームが提供する口座に預ける。売り手は当該第三者機関の口座に商品代金が支払われたことを確認した後に商品を出荷する。この時点では、売り手には商品代金はまだ支払われていない。その後、商品が届いたこと、かつ品質に問題がないことなどを確認した後、商品受け取りを買い手が当該第三者機関に伝えると、第三者機関に預けていた商品代金が売り手に支払われる。

トラブル防止効果も

第三者支払いサービスの仕組みの大きな特徴として、消費者保護の考え方に基づき、注文した商品の数量が違っていたり、異なる商品が届いた場合などのトラブルを未然に防ぐことができる点が挙げられる。1988年から始まった「Paypal(ペイパル)」は世界的に有名な第三者支払いサービスで、04年に始まった「支付宝(アリペイ)」は中国最大の第三者支払いサービスだ。

第三者支払いサービスが開放されるまでは、台湾におけるネット上の商品取引は基本的に「売り手が指定した銀行口座に買い手が送金した後、売り手が商品を出荷する」という仕組みになっていた。このため、商品代金を支払ったが商品が届かない、または品質に問題があるというような法的な紛争が生じることが起きたことで、ネット上取引に対し少なからぬ不信感が生まれることにつながった。「第三者支払いサービス」の開放により、ネット上の取引の安全性が高まるため、電子商取引の商機も大幅に拡大する見込みだ。台湾で展開する日本の業者も、この新制度を利用して商機を開拓することが考えられる。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。