第20回 雇用主が労働基準法第12条第2項の期限を超えて労働者を解雇する場合、適法な解雇の効力は生じない

台北地方裁判所は2013年3月13日、12年度労訴字第116号判決を下し、労働基準法第12条第1項第4号における「労働者が労働契約または就業規則に違反し、その情状が重大な場合、雇用主は予告せずに契約を解除することができる」という規定内容および同条第2項における「雇用主は前項の規定に基づき契約を解除する場合、その事由を知った日から30日以内に行わなければならない」という規定内容について、「当該期限を超える場合は適法な解除の効力は生じず、雇用主が労働者の労務提供を拒む場合は労務の受領遅延に該当し、労働者には補足して労務に服する義務はない」という見解を示した。

本件紛争事件の概要は以下の通りである。

原告甲は06年10月から被告乙社に雇用されていた。乙は09年12月、甲が労働契約、就業規則などに違反したとして甲との労働契約を解除した。甲は乙の解雇行為が違反であるとして労働基準法第14条第1項第6号における「雇用主が労働契約または労働者関係法令に違反し、労働者の権益を損なう恐れがある場合、労働者は予告せずに契約を解除することができる」という規定内容に基づき、乙との労働契約を解除し、その上で同法第14条第4項において準用する第17条の規定に基づき、乙に対し解雇手当、予告期間の賃金などを支給するよう請求した。

解雇の期限に注意

裁判所は審理の上、以下の通り判断した。

乙は甲に労働基準法第12条第1項第4号の事由があるとして労働契約を解除したが、乙が当該契約を解除した際、労働基準法第12条第2項に規定される30日の期間を超えていたため、適法な解除の効力を生じない。そのため、甲、乙間の雇用関係は乙の解除行為により消滅してはおらず、その後、乙が甲の労務提供を拒む場合、労務の受領遅延に該当し、甲には補足して労務に服する義務はなく、甲はなお民法第487条の規定に基づき乙に賃金を請求することができる。

「乙は労働基準法第14条第1項第6号における『労働契約または労働者関係法令に違反し、労働者の権益を損なう恐れがある場合』に該当するため、解雇手当などを請求する」という甲の主張については、裁判所は、甲は乙に上記の違法な事由などがあることを証明する具体的な証拠を提出していないと判断し、甲のこの部分の請求も棄却する。

雇用主が労働者を解雇する法律上の理由を有する場合、無効な解雇とならないよう、解雇の期限に特に注意しなければならない。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。