第26回 会社の保証責任について

台湾新北地方裁判所が2013年5月27日に下した13年度建字第45号民事判決によれば、会社法第16条の規定に基づき、会社は他の法律に基づく場合または定款に定めがある場合を除き、保証人になることができず、会社の法定代理人(董事長)が会社名義で他者と保証契約を締結した場合、法定代理人が自ら保証責任を負わなければならず、その代理する会社は保証責任を負わない。

本件の概要は以下の通りである。

原告A社は被告B社が発注した消防・安全設備プロジェクトを請け負い、双方は12年7月にプロジェクト請負契約を締結した。A社は「係争プロジェクトが既に完工し、検収の結果、瑕疵(かし)がないにもかかわらず、B社が支払を拒んだため、契約および請負関係に基づき、B社に対してプロジェクト費用および遅延利息の支払を請求する」と主張した。B社はこれに対し次のように抗弁した。「B社は13年6月に第三者である丙を注文者、B社を請負人とする消防・安全設備プロジェクト契約を締結した。B社の高級幹部である乙とA社の法定代理人である甲とは仲のいい友人であるため、甲はB社が請け負った丙のプロジェクトに鉄工の施工業者が必要であることを知り、C社を鉄工の施工業者として乙に推薦し、さらに甲は、C社が違約した場合はA社が責任を負う旨保証した。ところが、その後C社は、違約して遅々としてプロジェクトを完成させなかった」として、B社はC社に対して60万台湾元の損害賠償を請求したほか、A社に対してもB社の損害について保証責任を負うよう要求した。

定款記載がなければ保証不能

裁判所は審理の上、以下の通り判断した。

「会社法第16条には、『(第1項)会社は、他の法律または会社の定款に基づき保証を行うことができる場合を除き、いかなる保証人にもなることができない。(第2項)会社責任者は前項の規定に違反した場合、自ら保証責任を負わなければならず、会社がこれにより損害を受けた場合、賠償責任も負わなければならない。』と規定している。本件では、A社の定款には保証することが可能な旨の記載がなく、また他の法律にもA社が保証可能と規定されていないため、A社はいかなる者の保証人にもなることができない。たとえ甲とB社が保証契約を締結していても、甲が自らその全ての責任を負わなければならず、原告A社は保証責任を負わない」としてB社の主張を退けた。

従って、取引の相手方会社から保証提供の申し入れがあった場合、保証が無効とならないよう、事前に当該会社の定款に会社が保証が可能な旨の記載があるかどうか、または他の法律において当該会社が保証することが認められているかどうかを確認すべきである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。