第27回 監査役の監査権限

経済部は先ごろ、株式会社の監査役は会社に対して株主名簿や株主会議事録等の資料の提供を求めることができ、会社は提供を拒むことができないとの見解を示した。

経済部の2013年5月23日付経商字第10202057450号書簡によると、監査役は株式会社の法定常設監督機関であり、その職責は会社の業務執行の監督および会社の会計業務の監査である。このほか、会社法第218条第1項には、「監査役は会社の業務執行を監督しなければならず、また、いつでも会社の業務および財務状況を調査し、帳簿・書類を監査することができ、かつ取締役会または支配人に報告提出を請求することができる」と定められている。「帳簿・書類」が何を指しているかについては、経済部の1992年12月8日付経商字第232851号書簡の解釈によると、株主名簿、株主会議事録、貸借対照表および社債原簿等が含まれる。従って、監査役の監査権限に基づき、当然、会社に対して株主名簿や貸借対照表等の資料の提供を求めることができ、会社が提供を拒んだ場合は、会社法第218条第3項の規定により、監査役の検査行為を妨害し、拒みまたは回避した者は、主管機関である経済部より2万台湾元以上、10万台湾元以下の過料に処される。

資料提供、協議書に約定を

会社の株主会議事録や株主名簿等は公開資料ではなく、取締役などの経営陣の同意を得ない限り、一般の株主は随時、閲覧することができない。そのため、実務上、外国企業が台湾の会社に投資するに当たり、一定比率の株式を保有しているにもかかわらず、随時、会社の株主会議事録や株主名簿等の重要な資料を閲覧し、投資先会社の状況を把握することができない場合がある。

従って、日本企業が台湾の会社に投資する場合において、単純に株式だけ保有し、取締役などの経営陣としての職務を担わないときは、日本企業が会社の株主名簿、株主会議事録、財務諸表等の資料の提供を台湾側に対していつでも求めることができる旨を、事前に投資協議書において約定しておくことをアドバイスする。このほか、上述の通り、日本企業が会社の監査役に就任している場合、法律に基づいて会社に対して関連資料の提供を求めることもできる。なお、台湾の会社法上、自然人もみならず法人も監査役に就任できる。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。