第43回 不実の株主会議事録を作成した場合の法的責任

桃園地方法院の2014年2月14日の13年度桃簡字第2249号判決書によれば、株式会社の株主総会の議事録は業務上の文書の一種に該当するため、もし作成権者が不実な内容の議事録を作成した場合、刑法第215条の「業務上不実記載罪」に当たり、法に基づき3年以下の有期懲役、拘留または500台湾元以下の罰金に処される。

本件の概要は以下の通りである。

台湾の会社法の規定によれば、株式会社が減資する場合、まず株主総会の決議を行わなければならない。甲はA株式会社の董事長であり、甲は経済部に対しA社の減資登記の申請に当たり、株主総会を開催せずに13年6月にA社において自ら「A社の13年度の臨時株主総会議事録」を作成し、当該議事録に「A社は13年6月某日に臨時株主総会を開催し、発行済み株式総数の68.4%を代表する株主が出席し、出席株主全員が減資などの内容に同意した」という内容を記載、A社の社印および甲個人の印鑑を押印し、経済部中部弁公室に減資登記を申請した。A社の株主である乙は当該状況を発見したため、司法機関に刑事告訴を行った。

公務員の登記作業も違反に

裁判所は審理の結果、以下の通り判断を下した。

株式会社の株主総会の議事録は業務上の文書の一種に該当し、もし作成権者が不実な内容の議事録を作成した場合、刑法第215条の「業務上不実記載罪」に当たる。また、本件において、甲はA社の不実な内容の株主総会議事録を作成、その上当該議事録を経済部に提出し、経済部の担当公務員に不実の減資登記を行わせたため、甲の行為は同時に、同法第216条の「不実文書行使罪」、同法第214条の「公務員に不実記載をさせる罪」を犯したことになり、その罪を問わなければならない。

実務において、会社の株主総会議事録の内容が実際と一致しないことは珍しくはないが(例:一部の株主が欠席したにもかかわらず「株主全員が出席した」と記載する、日時・場所の記載に誤りがあるなど)、告発されると議事録の作成者が刑事責任を負う可能性があるため、十分に注意しなければならない。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。