第115回 会社法上の閉鎖的株式会社と普通の株式会社との比較

新形態のビジネスモデルに対応し、台湾での会社設立により多くの台湾内外の起業家を呼び込むため、会社法は第356条の1以下に「閉鎖的株式会社」の章節を新たに設け、2015年9月4日から正式に施行された。「閉鎖的株式会社」とは、会社法第356条の1によると、株主の人数が50人以下であり、定款において株式の譲渡制限が定められている株券非公開発行会社を指す。

閉鎖的株式会社と普通の株式会社との違いについては、次のいくつかの点が挙げられる。

1)株主の人数:前者は50人以下であるが、後者は制限がない。

2)定款における株式譲渡制限の有無:前者は制限が付されているが、後者は禁止してはならないとされている。

3)株券公開発行会社であるかどうか:前者は必ず株券非公開発行会社でなければならないが、後者は制限がない。

4)出資の種類:前者は労務または信用による出資も可能であるが、後者は現金、債権および技術による出資に限られ、労務または信用による出資はできない。

5)額面金額:前者は額面株式または無額面株式を選択して採用することができるが、後者は一律に額面株式とされている。

6)特別株:前者は複数議決権付特別株、特定事項拒否権付特別株などを発行することができるが、後者は原則としてこのような特別株を発行することができない。

7)董事、監察人の選任方法:前者は定款において「累積投票制」以外の選任方法を規定することができるが、後者は「累積投票制」のみを採用することができる。(「累積投票制」とは、会社法第198条、第227条によると、「1株式につき選出すべき董事または監察人の人数と同数の選挙権を有し、1人に集中させて選挙し、または数人に分散させて選挙し、投票用紙によって示される選挙権をより多く獲得した者を董事または監察人として当選させることができる」ということを指す。)

8)株主総会の招集方法:前者はテレビ会議または書面決議を採用することができるが、後者はフェースツーフェースで開催しなければならない。

閉鎖的株式会社の主な特色は、会社が無額面株式を選択して発行することができ、複数議決権付特別株または特定事項拒否権付特別株を発行することもできることから、初期において自己資金が不足している起業家が外部からの資金導入を行うと同時に、会社に対する経営権を保有することもできるという点にある。台湾での企業を計画している外国人は、閉鎖的株式会社の設立を検討することができる。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

(本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに執筆した連載記事を転載しております。)