第121回 台湾法における債権の「消滅時効」について

「消滅時效」とは、債権者がその債権等の請求権を一定の期間行使しなかった場合に、債務者がこれにより抗弁権を取得し、債権者の請求に対して履行を拒否することができることをいう。例えば、甲は乙に対して100万台湾元を貸したが、ずっと返済を請求しなかった場合、金銭賃借関係の消滅時効が成立した後、たとえ返済を請求しても、乙はこれを拒否することができ、違法に当たらない。

台湾法における消滅時効の主な規定は以下の通りである。

一、民法第125条:請求権は、15年以内に行使しないときは、消滅する。ただし、法律においてより短い期間が定められている場合は、その規定に従う。

二、民法第126条:利息、配当金、賃料、扶養費、年金およびその他の1年または1年以下の定期給付債権の場合、その各期間の給付の請求権は、5年以内に行使しないとき、消滅する。

三、民法第127条:次に掲げる各号の請求権は、2年以内に行使しないとき、消滅する。

1)旅館、飲食店および娯楽場における宿泊料、飲食料、席料、消費物の代価およびその立替金。

2)運送賃および運送人による立替金。

3)動産の貸し出しを業とする者の貸し出し料。

4)医師、薬剤師および看護師の診療費用、薬代および報酬、並びにその立替金。

5)弁護士、会計士および公証人の報酬、並びにその立替金。

6)弁護士、会計士および公証人が当事者から受領した物品の返却。

7)技術者および請負人の報酬、並びにその立替金。

8)商人、製造者および手工業者が提供した商品および製品の代金。

前述の甲が乙に対して100万元を貸したケースでは、民法第125条の長期時效が適用されるため、甲が金を貸した後15年間ずっと乙に返済を請求しなかった場合、消滅時效が成立した後、乙は返済を拒否することができる。一方で、債権者は次の民法第129条の規定に基づき消滅時効を中断させ、債務者が給付を拒否する抗弁権を取得するのを阻止することができる。「(第1項)消滅時効は、次に掲げる事由により中断される。一、請求。二、承認。三、訴訟の提起。(第2項)次に掲げる事項は、訴訟の提起と同一の効力を有する。一、支払督促の申し立て。二、調停または仲裁の申し立て。三、和議債権または破産債権の届け出。四、訴訟告知。五、執行手続きの開始または強制執行の申し立て」。

企業間の取引でよく見られる代金債権には、民法第127条第8号の2年の消滅時效が適用されるが、期間がとても短いため、債権者である会社が時效規定に注意を払っておらず、代金を請求することができなくなったケースが実務上よくある。企業においては、会社の各種の債権の消滅時效の期間に特に注意し、債務者に対して適時に請求を行うことをお勧めする。

2015-11-16


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

(本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに執筆した連載記事を転載しております。)