第140回 労働者健康保護規則の改正について

2016年3月23日に、労働者健康保護規則について主に2つの改正がなされた。将来的に、事業者組織において工場訪問健康サービスを行う医療従事者は在職者教育訓練を受けなければならないとする改正、および、健康に危害を及ぼす作業を行う労働者に求められる身体検査を、臨時的な一般業務従事者には実施する必要がないとする改正である。

現行の労働者健康保護規則第3条および第4条には、ある事業者組織において、同一の就業場所における労働者数が300人以上、または異なる地域に分散した労働者の総数が3,000人以上に達する場合、医療従事者を雇用しまたは招聘(しょうへい)して、労働者健康サービスを行わなければならないと規定されているが、労働者健康サービスに従事する医療従事者の知識・能力を向上させるため、改正された労働者健康保護規則第5条の1では、工場訪問健康サービスを行う医療従事者は在職者教育訓練を行わなければならないことが要求された。もっとも、職業医学科専科の医師については、既に在職者教育訓練および免許更新メカニズムによって、一定の知識・能力が確保されているため、職業医学科専科の医師は、本条の在職者教育を受けなくてもよいとされた。

次に、労働者の健康の確保を目的として、プロピルブロミド、ホルムアルデヒド、インジウムおよびその化合物などの製造、処置または使用作業は、特に健康に危害を及ぼす作業範囲に分類されるとともに、これらの作業を行う労働者の保護を強化するため、特殊身体健康診断項目および関連事項が規定されている。しかし、一部の短期的または臨時的な一般業務は、職業上の健康危害性が比較的低く、かつ身体検査に関する規定が完全に適用されているわけではないため、実務の必要性に合わせ、改正された労働者健康保護規則第10条では、これらの労働者については身体検査の実施を免除できると規定された。

上記のほか、医療機関による実施・通知を中央主管機関が確認・承認するため、改正された労働者健康保護規則第18条では、雇用者が労働者の特殊健康診断を実施する場合、実施スケジュール、業務種別および医療機関などの内容を中央主管機関が公告するシステムに登録しなければならないと規定された。また、在職者教育訓練などの改正後の一部の義務は実施に時間を要するため、当該義務に関連する条項については17年1月1日から実施される予定である。


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執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。