第168回 外国会社による営業以外の法律行為の適法性

最高裁は2016年9月20日に16年上字第1036号判決を下し、外国会社が台湾において営業以外の法律行為のみを行う場合、当該外国会社は台湾で許認可を受けていなくても会社法第371条第2項の規定に違反しない、と指摘した。

本件の概要は以下の通りである。

香港のL社は10年に増資のため台湾で株主を募集した。台湾人甲は、L社の株式取得のため出資金180万台湾元をL社が台北で開設した銀行口座に振り込んだ。その後、甲はL社との関係が悪化し、「L社は台湾政府の許認可を受けていない外国会社であり、台湾で株主の募集はできない」、「L社の増資手続きは台湾の会社法の規定に違反している」、「L社は詐欺の手段により出資金を得た」などの理由でL社を提訴し、180万元および利息を返還するようL社に請求した。

最高裁は審理後、甲の全面敗訴の判決を下した。主な理由は以下の通りである。

1.会社法第371条第2項では、外国会社は許認可を受けた上で支店の登記を行っていない場合、中華民国内で営業してはならない、と規定されている。従って、外国会社が台湾で営業以外の法律行為のみを行う場合、当該外国会社は、台湾で許認可を受けていなくても、上記の規定に違反していない

2.本件では、L社が台湾で新株主を募集し、新株主に香港で発行した新株を取得させた。これは台湾で営業に従事したことにはならず、会社法第371条第2項に違反しない。また、香港における増資は台湾の会社法に抵触せず、当然ながら増資手続きの違法という問題も生じない

3.甲はL社の詐欺行為を証明する証拠を提出していない

台湾法によれば、外国会社は台湾政府の許認可を受けた上で支店または子会社を設立してからでなければ、台湾で営業行為を行うことはできない。違反した場合、会社法第19条、第377条の規定に基づき、行為者は1年以下の懲役、拘留もしくは15万元以下の罰金に処されるか、またはこれらを併科され、かつ民事責任を負う。

もっとも、どのような行為が「営業行為」に該当するかは、外国会社には判断しづらい問題である。よって外国企業は、台湾で商談などの活動を行う前に、まず台湾の法規および裁判例に精通した法律の専門家にアドバイスを求めることをお勧めする。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。