第177回 景品の広告費計上における証明文書について

営利事業者が商品の販売量を増やすために最もよく用いる販促方法は商品販売時に景品を付けることであり、これは消費者の消費を呼び寄せることができる。

他方では広告費として計上して申告し、その結果納付税額を減らすこともできる場合があるが、広告費として計上できない場合もあるため、追徴課税されないように、広告費としての計上に関する規定に注意を払う必要がある。

財政部国税局の指摘によれば、営利事業者所得税調査照合準則第78条第2号第8目の規定では、商品販売時に併せて景品を提供する場合、景品を提供したことを示す印章を商品販売時の領収書に押印した上で、領収書の番号、金額、景品の名称、数量および金額が記載された、景品支出に関する日次報告書を作成しなければならず、広告費としての計上はこれらに基づき認定するとされている。

例えば、ガソリンスタンド業者が商品販売時に併せて景品を提供する場合には、販促用ポスター、販促方法および販促用写真などの証明、ならびに、その日に発行した領収書を対象として景品の名称、数量、金額を毎日総括して作成し、景品提供者が署名押印した景品支出に関する日次報告書を証憑とすることができる。

なお、国税局は次の事例を挙げて説明している。

2014年度に営利事業者所得税決算申告案件について調査照合が行われた際に、ガソリンスタンド業者Aが、その他の費用として300万台湾元余りを計上して申告しており、このうちトイレットペーパー、ティッシュペーパー、液体洗剤などの物品の金額が合計で200万元余りにも上っていることが発覚した。

調査の結果、当該物品はガソリンスタンドが景品として提供したものであって、広告費に該当するはずであったため、当局は証明文書を提示するようAに通知した。

しかしAは販促用の写真およびポスターしか提示せず、景品支出に関する日次報告書などの資料を提示することができなかったため、当該広告費200万元余りは経費として認められず、Aの追徴課税額は34万元余りと査定された。

営利事業者が、広告費として計上する景品がある場合、必ず、上記税法の規定に合致する証明文書を添付するよう注意が必要である。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。