第185回 株式会社の定時株主総会開催日に関する制限について

台湾における株式会社の定時株主総会の開催に関し、台湾の会社法第170条第1項、第2項の規定によれば、定時株主総会は毎年少なくとも一度は行わなければならず、かつ毎会計年度終了後6カ月以内に開催しなければならないとされている。

なお、台湾の商業会計法第6条の規定によれば、法律に特段の規定が置かれている、または営業上特別な必要性がある場合を除き、会計年度は毎年1月1日から12月31日までとされている。

従って、台湾の会社法第170条第1項、第2項および商業会計法第6条の規定によれば、株式会社は毎年6月末日前に、定時株主総会を行わなければならない。実際に、台湾の多くの上場会社、店頭公開会社、新興会社は、6月に集中して定時株主総会を行っており、その数は1,000社を超える。

特定日には300社以上も

かつて、6月の特定の日には、1日で300社を超える上場会社、店頭公開会社、新興会社が定時株主総会を行うこともあった。これは、各会社が総会屋対策の一環として故意に6月の同じ日を選んで定時株主総会を行い、総会屋が同時に異なる会社の定時株主総会の会場に来ることができないようにしていたためである。

例えば、2009年6月19日には389社の上場会社、店頭公開会社、新興会社が定時株主総会を行っていたとの記録がある。

しかし、会社が定時株主総会を行う日が過度に集中することは株主にとって望ましくない。というのは、異なる複数の会社の株主である投資家は、各会社の全ての株主総会に出席して株主権を行使することはできず、またこのことは定時株主総会への出席率を低下させる原因にもなるからである。会社の経営陣もこの状況を利用し、株主による監督を逃れていた。

開催数を制限

そこで、このような状況が発生することを避けるため、台湾の行政院金融監督管理委員会(金管会)は10年11月12日に規則を発布し、今後、台湾の上場会社、店頭公開会社、および新興会社の定時株主総会日については、事前にインターネットで申告しなければならず、かつ1社につき1つの期日しか選択できないものとした。

また、1日に定時株主総会を開催できる上場会社、店頭公開会社、および新興会社の数は制限されており、先にインターネットで申告を行った会社から、優先的に選択した期日に定時株主総会を行う権利を有する。希望数が上限を超えた場合、他の期日を選ばなければならないが、模擬申告を2回行ってから事前申告を行うため、模擬申告の間におおよそ、希望者の多い期日が判明することになる。

1日に定時株主総会を開催できる上場会社、店頭公開会社、および新興会社の数は、規則発布当時は200社までとされていたが、12年度からは120社までとされ、さらに15年度からは100社までとされている。

なお、17年の定時株主総会の開催日に関しては、各社は17年3月15日までに申告を済ませなければならず、かつ董事会を開き、董事会決議をもって定時株主総会の期日を確定し、各株主に通知しなければならないとされていた。

ただし、株主の議決権行使について、電子方式または書面により通信投票を行う方式を採用している場合は、株主自ら定時株主総会に出席しなくても株主権を行使することができる。

このため、金管会の規則によれば、定時株主総会において電子方式を採用している会社、または書面により通信投票を行う会社については、1日当たり100社という定時株主総会を行う上場会社、店頭公開会社、新興会社の数の制限は受けない。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。