第195回 資金洗浄防止関連法の改正について

2016年12月28日に改正公布された資金洗浄防止法第12条の規定によると、税関へ申告が義務付けられるものについて、現行の「外貨現金および有価証券」に加えて、「香港またはマカオで発行された通貨」、「台湾元現金」、「金」、および「資金洗浄に利用される恐れのある物品」が追加された。

また、申告義務の対象となる輸送方法について、現行の「旅行者または乗組員による出入国時の所持」に加え、「貨物輸送」、「速達」、「郵便」、「類似するその他の方法による輸送」が追加された。

なお、改正前の資金洗浄防止法における「外貨現金」にも、「香港またはマカオで発行された通貨」は含まれていたが、香港・マカオ関係条例に基づき今回の改正で特に明記されることとなった。

上記資金洗浄防止法の改正法は17年6月28日より施行された。同改正法の細則として、資金洗浄防止法第12条第3項の授権規定に基づき、財政部は6月22日に「資金洗浄防止物品の出入国申告および通報規則」を改正公布し、同規則は6月28日に施行された。

具体的な改正については、以下の通りである。

改正前の資金洗浄防止法第10条には以下の通り規定されていた。

旅行者が総額1万米ドルを超える外貨現金または額面総額1万米ドルを超える有価証券を所持して出入国する場合、出国者は搭乗前に税関カウンターで「旅行者または乗組員による外貨、人民元、台湾元または有価証券を所持した出入国についての登記表」に記入した後に通関しなければならず、また入国者は「中華民国税関申告書」および「旅行者または乗組員による外貨、人民元、台湾元または有価証券を所持した出入国についての登記表」に記入して税関に申告した上で、X線検査を受けて通関しなければならない。未申告または申告が不実である場合、没収または過料に処す。

これが、今回の改正により、前述の外貨現金および有価証券に加え、新たに以下の申告物品が追加された。

1.現金:

(1)総額10万元を超える台湾元現金

(2)1万米ドルの価値を超える香港またはマカオで発行された通貨

2.金:

総額2万米ドル相当の価値を超える金

3.資金洗浄に利用される恐れのある物品:

総額が50万台湾元相当の価値を超え、かつ私用目的以外のダイヤモンド、宝石、プラチナ

また、申告義務対象については、現行の「旅行者または乗組員による出入国時の所持」に加え、「貨物輸送」、「速達」、「郵便」、および「類似するその他の輸送などの輸送方式により輸出入する場合」にまで拡大された。

違法所持、年間108件

なお、調査によると、税関で発覚して押収された16年度の旅行者による出入国時の現金、有価証券または金などの違法所持は計108件あり、そのうち台湾元は45件で約1億4,680万元余り、金は7件で計10キログラム、おおよその市場価値は1,240万台湾元余りであったが、改正法の施行後、このような案件はそれぞれ没収または過料に処される。

新聞報道によれば、7月5日、2人の女性がそれぞれ30万台湾元および22万3,000台湾元を所持して出国しようとして、税関に差し押さえられて没収されている。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。