第227回 CPTPPと台湾

米国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を離脱した後、参加11カ国は、日本の主導によって、一部論争のある条文を凍結した上で11カ国での発効を目指すことでスピード合意し、今月8日、チリで正式署名を行った。その際、協定の名称は「包括的および先進的環太平洋連携協定(CPTPP)」に変更された。

TPPは当初、2005年にブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールの4カ国の交渉によって発足した環太平洋パートナーシップ協定で、最初は貿易圏としての規模は大きくなかったが、米国と日本が加盟交渉に加わって以降は急速に重要性が増した。だが、国によって産業の発展状況が異なること、米国の要求に応じて多くの条文(例えば知的財産権に対する保護強化など)が草案に組み入れられたことにより、加盟交渉国の多くがTPPによって国内の産業発展に困難が生じることを懸念、先進国と発展途上国との間での論争に発展していた。このため、米国が交渉から離脱したことで、論争の的となっていた条文が凍結され、交渉は速やかに完了した。

加盟申請は正式発効後

台湾は政治的要因によって国際組織への参加が容易ではないが、CPTPPへは世界貿易機関(WTO)に加盟した際の方式にのっとり、正式発効後の加盟申請を目指しており、TPP交渉の段階から発効後の早期加盟を念頭に国内法規を整備してきた。CPTPPは参加国のうち6カ国または半数以上が通知に署名し、かつ国内の審議手続きが完了してから60日で発効とTPPよりも発効条件が緩い。「国内総生産(GDP)の合計が全体の85%以上を占める6カ国以上の批准」というTPPでは課されていた縛りもない。経済部はCPTPPが最速で2019年初めに発効すると予想し、現在、申請への準備を行っているところだ。

CPTPPの正式発効後、台湾に進出している日系企業は、台湾が将来CPTPPに加盟することによって日台双方の一部商品の関税が撤廃される可能性があることを留意すべきである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。