第228回 土地賃借人らの優先購入権

建築物の経済的価値を保護し、法律関係を単純化するという立法趣旨に基づき、土地法第104条第1項前段には、「土地の売却時、地上権者、典権(日本の質権に類似する権利)者または賃借人は、同様の条件で購入する優先権を有する。」旨の規定がある。以下では、本規定に基づき優先購入権を有する者を合わせて「優先購入権者」という。

売り主の通知義務

上記優先購入権の行使を検討させるため、地上権、典権または賃借権が設定されている土地を売却する場合、売り主は、優先購入権者に対し、売却通知をしなければならない。仮に、売り主が優先購入権者に売却通知をせずに第三者と売買契約を締結した場合、その契約は優先購入権者に対抗できない(土地法第104条第2項後段)ため、注意が必要である。

なお、優先購入権者が、売却通知を受け取ってから10日以内に意思表示をしない場合は、その優先権を放棄したものとみなされる(土地法第104条第2項前段)。

売買条件についても通知が必要

土地法上、土地の売却について、売り主は、優先購入権者に売却通知をすることが求められているが、その通知内容については明文の規定がない。この点について、「最高法院民事判決85(1996)年度台上字第2118号」によると、土地の売り主は、優先購入権者が同様の条件で優先購入するかどうか検討するために、土地売買の事実のみならず、第三者と締結した売買契約の条件も優先購入権者に通知しなければならない。

そのため、売り主は、優先購入権者に対し、売買条件について通知しなければ、通知義務を果たしたとはいえず、第三者と締結した売買契約は優先購入権者に対抗できない可能性がある。

優先購入権は形成権

「最高法院民事判決106(2017)年度台上字第2715号」によると、土地法第104条第1項の「賃借人は同様の条件で購入する優先権を有する」との規定は、賃借人(優先購入権者)が土地の売却時に優先購入権を行使する際に、当該土地所有者(売り主)の同意を得る必要がなく、賃借人と土地所有者は直ちに売買関係を形成し、当該売買関係の権利・義務は、土地所有者と第三者が締結した売買契約と一致(売買目的物の範囲、価格、支払い方法、瑕疵担保等の売買条件は全て同一)することを指す。そして、優先購入権を行使した賃借人は、土地所有者に対して、直接売買関係により生じる権利を主張できる。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。