第233回 社外取締役の権限拡大

立法院は2018年4月3日、社外取締役に従来より大きな機能を発揮できる法的根拠を付与し、社外取締役制度を健全化するため、「会社は社外取締役による業務の遂行を妨害、拒否、および回避してはならない。社外取締役は業務の遂行において必要と認める場合、関連人員を指名、派遣するよう董事会に要求すること、または自ら専門家を招請して協力させることができる。必要な関連費用については、会社の負担とする」との規定を証券取引法第14条の2に追加することを決議した。また、違反した場合の罰則を第178条に追加した。

監督機能に事実上の制限

従来は、大きく分けて次の3つの問題が存在していた。

1)社外取締役は大株主の支持を得て選任されることが多く、経営陣が大株主だった場合、監督、けん制するのが困難

2)予算、人員不足により、監督を行うのが事実上困難

3)社外取締役の機能が限定的である事実を踏まえ、裁判で社外取締役にあまり重い責任を課すことが少ない。そのため、社外取締役の監督機能が制限される、という悪循環に陥っている

専門家への協力要請が可能に

今回の法改正の目的は、上記2点目の問題を解決することだ。社外取締役は会社の経営に対する監督責任を負わなければならないとはいえ、銀行、科学技術、財務の他、建築、知的財産など全ての分野の専門知識をどれも同じように理解しているわけではない。法改正によって、社外取締役が専門家、学者を招請し、会計監査への協力や、意見、資料などを求めることができるようになる。

社外取締役は台湾の全ての上場会社に置かれている。近年、台湾の上場会社を買収する日本企業も増えており、台湾の会社経営に対する理解を深めるため、今回の法改正に特に注意すべきである。

なお、弊所の弁護士は、日本企業が買収した台湾の上場企業の監査役を務めているため、今回の法改正に特に注目している。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。