第244回 改正会社法についてのポイント

7月6日、立法院(国会)本会議は会社法の改正条文を最終可決しました。今回の改正範囲は過去20年で最大で、各界から大きな注目を集めています。

今回の改正のポイントは以下の通りです。

子会社にもボーナス支給可能に

1.従業員のボーナスについて:現行法では、ボーナスの支給対象は自社の従業員のみと定められているが、改正法では、親(子)会社が黒字の時は、子(親)会社の従業員にもボーナスを支給できるようになる。これにより、企業の人材招致、人材流出防止の融通性に改善が見込まれる。

2.董事の数について:現行法では、株式会社は少なくとも3人の董事を置かなければならないと定められている。しかし、改正法では、上場会社の場合は証券取引法に従って5人以上の董事を置かなければならないが、普通の株式会社は、経営コスト削減のため、董事の数は3人を維持してもよく、1人または2人のみでも認められる。

董事会開催なしでも書面決議

3.董事会の招集について:現行法では、董事会は実際に集まって開催するか、テレビ会議の形で行わなければならないが、改正法では、董事会の意思決定効率を向上させるため、実際の開催なしでも書面決議を行うことが可能になる。

4.利益分配について:現行法では、利益分配(すなわち現金配当および株式配当)は1年に1回しか行えず、かつ株主総会における決議を経なければならないが、改正法では、会社は1年に2回利益を配当することが可能になり、株主総会を開催する必要はなく、董事会における決議を経るだけで実施できる。

5.額面株式または無額面株式の発行について:現行法によれば「閉鎖会社」以外の会社は、額面株式(すなわち株券上に1株当たりの金額を記載しなければならない、例えば1株当たり10台湾元)を発行しなければならないが、改正法では、額面株式または無額面株式を発行するかは会社が自由に決められるようになる。

6.外国会社について:現行法によれば、外国会社は台湾政府から承認されない限り適法な法律主体となることはできないが、改正法では、外国会社は台湾で支店登記さえすれば営業することができ、承認手続きが不要となる。

外国語社名も登記可能

7.外国語の社名について:現行法によれば、会社は外国語での社名登記は受理されないが、改正法によれば、会社は中国語の社名が必要ではあるが、外国語の名称も登記することができる。

8.資金洗浄の防止について:現行法には関連規定がないが、改正法では、資金洗浄の手段となることを避けるため、会社は原則として政府に実質的な受益者(董事、監事、支配人および10%を超える持分を有する株主)の情報を申告しなければならず、また、無記名株式制度が廃止される。

今回の改正条文の実施日については、行政院が別途公布する予定です。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。