第222回 緊急車両接近時の対応について

2017年12月29日、「道路交通安全規則」(以下「規則」という)が一部改正され、対面通行(車線が往復の方向別に分離されていない状態)の道路だけではなく、片側1車線の場合であっても、対向車は、緊急車両のサイレンが聞こえた場合には右側に寄らなければならないことが明記された(規則第101条第3項第2号)。従来の規定では、「1車線」の道路において、緊急車両のサイレンが聞こえた場合に、右側に寄らなければならないことが規定されていたものの、この「1車線」の定義が不明確であったため、これに「片側1車線」の場合も含まれることが確認されたことになる。

一時停止が必要

また、対面通行または片側1車線の道路において、緊急車両のサイレンが聞こえた時の対応についても、改正がなされた。具体的には、緊急車両のサイレンが聞こえた場合、従来の規定では、徐行して右側に寄り、「いつでも停止できるよう準備」しなければならないとされていたが、今回の改正では、徐行して右側に寄った上、緊急車両に追い越させるよう、「適当な地点で一時停止」しなければならないとされた(規則第101条第3項第2号)。

日本の道路交通法第40条第2項では、交差点またはその付近以外の場所において、緊急車両が接近してきた時は、「道路の左側に寄って、これに進路を譲らなければならない」とされ、停止義務までは規定されていない。そのため、台湾において、対面通行または片側1車線の道路を走行中に緊急車両が接近してきた場合には、「適当な地点で一時停止」する必要がある点に特に注意しなければならない。

なお、片側2車線以上の道路の場合、規則第101条第3項第3号によると、緊急車両と同じ車線を走っている前の車は、隣の車線または路側に待避しなければならず、また、緊急車両の隣の車線を走っている車は、減速して待避に協力し、かつ、いつでも停止できるよう準備しなければならない。

交差点付近での対応

この他、交差点付近において緊急車両が接近してきた時の対応として、規則第101条第3項第5号に、「緊急車両が交差点を通過する時、既に交差点に進入している車両は、緊急車両の進行を妨害しない地点まで離れなければならず、同じ進行方向以外の、交差点に進入していない車両は、緊急車両を先行させるよう待避するため、減速、一時停止し、先を争って交差点に進入してはならない」旨の規定が追加された。

上記改正点は、18年1月1日から既に施行されている。道路交通管理処罰条例第45条第2項によると、緊急車両のサイレンが聞こえたにもかかわらず、すぐに待避しなかった場合には、3,600台湾元(約1万3,500円)の過料が科され、さらに、運転免許が取り消されるため、ご注意いただきたい。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。