第93回 台湾の離婚事由〜その1

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。

私の自宅の近くに、それほど大きくはないのですが、付近の人の憩いの場になっている公園があります。100年以上の樹齢を誇るガジュマルや桜の木などの樹木や草花があり、遊具も置かれ、狭いスペースながらおばちゃん軍団がダンス練習に励んだり、子どもたちがローラーブレード練習していることを目撃することもあります。涼しい夜には外国人留学生と思われる方々が酒盛りしているのを見かけることもあります。私は基本的には最寄りのMRT(台北都市交通システム)の駅と自宅の間の通勤路として公園の中を毎日歩いているだけですが、時々、公園の中では少しキレイな空気を吸えるような気がして、石の上に座って深呼吸したりしてます。

この近所の公園で、先日、台湾総督として有名な児玉源太郎の名前が書かれてある石のテーブルを発見して驚きました。そのテーブルには、この辺りに、児玉源太郎の別荘があったというようなことが書かれていましたが、2年ほど近辺に住んでいたのに、全く気付きませんでしたね〜(笑)。他にも、この公園には見たことのない鳥が出没したり、雨のときに巨大なかたつむりが出てきたり、いろいろ発見があって楽しませてもらっています。

本日は台湾の離婚事由について日本と異なるところがあって面白いと思いましたので、来週と二回に分けて皆さまに紹介させていただきます。
そもそも、離婚事由とは、協議による離婚ができない場合に、裁判を通じて離婚を相手方に強制する根拠となる事由をいい、日本でも台湾でも民法に規定があります。

日本の民法においては、離婚事由は、「①配偶者に不貞な行為があったとき。②配偶者から悪意で遺棄されたとき。③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」と規定されています。

台湾の民法においては、日本の離婚事由より多岐にわたる離婚事由が規定されており、例えば、「夫婦の一方が他方の殺害を意図したとき」。確かに、こんな状況が明確に立証できるなら、日本でも離婚事由の⑤に該当するとして離婚が裁判で認められるように思います。例えば、殺害を依頼するメールを第三者に送付した記録があるようなときは離婚が認められるでしょう。夫婦喧嘩で包丁を振りかざした位では(怖すぎますが・・・)、この離婚事由に該当したといえるか裁判官次第ですかね〜。

台湾の民法所定の離婚事由には、他にも、「治療不可能な悪疾があるとき」。「悪疾」という言葉は、辞書には載っていましたが、あまり使わない言葉ですよね。意味は、「たちが悪くて、治りにくい病気」とのことで、つまりは、治療不可能な病気が配偶者にあるときに台湾では離婚が認められるということになります。日本では、④の精神病だけ明記されていますので、それ以外の病気が離婚事由として認められにくい可能性が結構あるように思われます。

もっとも、台湾でも簡単に認められるわけでもないようで、過去の裁判例によれば、不妊症や心臓病などでは離婚は認められず、認められた例としては、植物状態になって3年以上が経過した場合やエイズになった場合などがありました。エイズに関していえば、医療の進歩で、以前のように高い致死率があるわけではないと思われるところ、現在も「悪疾」として、台湾で離婚事由に該当するかは微妙かもしれませんね〜。別の人と姦通したということが立証できれば、それを理由に離婚が認められる可能性ももちろんありますけど。。。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。